(もうひとつのはじまり)
騒がしい音が聞こえていた ヒトの上げる悲鳴 何かが壊れる大きなオト 焼け焦げる火の匂い 煩わしく訴えかける血の臭い そんな騒ぎが随分続いて ―――静寂 閉じこめられた狭い空間では外の様子が分からない 煩わしさから解放されて、少しの間は安堵した 誰も訪れない状況に不安を覚えた そして、狭く苦しい場所に閉じこめられ怒りが沸いた その場所で、どの位の時間を過ごしたのか 今はもう解らない 解らないが、長い時間の後 すぐ側で何者かの気配がした 思わず上げた声に立ち止まり、何かを探す気配 そして、光 「こんな所にいたんだ」 聞こえてきた声 泣きながら伸ばされた手 何かを言う言葉は泣き声に消されて聞こえない 爪が当たる びくりと震える身体 それでも必死で伸ばされる手 「大丈夫」 聞こえた言葉に動きを止める 気が付けば、この子供以外にヒトは居ない ぎゅっとしがみついてくる身体 「………一緒に行こう」 必死な顔で呟かれた言葉に仕方なく頷いた |