(情報 SideL)
「モンスターの情報を纏めようって思うんだけどな」 いつもの執務室、側近と呼ばれる者達が集まった場所でラグナは告げる 「モンスターの情報ですか?」 「おう、月の涙もあったことだし今までと違ったモンスターも出歩いてるだろ?」 ラグナの言葉に僅かな時間を置いて、人々が頷く ま、月の涙が起きてからそれなりに時間が経っているからな、ピンと来ないってのも無理はないよな 「いろいろ忙しかったからな、モンスターの特性とか生息域をきちんと調べてないんだよな」 どこにどんなモンスターが居るのか、それがどういった性質を持つのか それを把握しておく事は大切な事だ 『確かに、データとして持ってはいないな』 ラグナの言葉に同意するようウォードが告げる 「情報は共有していた方が使いやすいだろ?」 戦士達だけでは無く一般市民も、どこにどんなモンスターが生息しているかを知っておくことは重要になる 情報としては有益だ 少し人手は使うが、訓練にもなるって事で悪い話でもない 特に反対する様な意見は出ない 話は集めたデータをどの様に纏め、どう使うかへと移行している 「それと関連しまして研究所の方から一つお願いがあります」 オダインの代理として同席していたフィーニャが相変わらず感情の見えない声で告げる 研究所の言葉に場がざわめく 「まぁた、オダインがおかしな事でも言いだしたか?」 ラグナも同じ様に場に合わせめんどくさそうに言う 「おかしな事かどうかは解りませんが、各地のモンスターのデータを集めたいそうです」 データだけでは無く同時にモンスターの体細胞を入手し、モンスターの研究を行いたい 「モンスターを採取するというのは、データを集めるついでに出来そうではあるが」 問題なのは、世界各地ってことだろ? 他国でエスタ兵士がモンスター討伐なんて事をやったら面倒な話になる 室内に居る人間の大半が難色を示す 難色を示しながらもはっきりとした拒絶が無いのは、提案が“オダイン”の物だと思っているからだ 変人ではあるが、それなりの実績がある おかしな研究ばかり行うが、それが役に立っている 「エスタ以外の場所ってのは、うちで手を出すのは無理だな」 『ただでさえ、エスタ軍は注目を浴びている、目立つ行動はやめた方が良い』 ラグナの言葉にウォードが同意する 「確かにエスタ軍がエスタ以外の地で動くのは拙いようですね」 フィーニャが人差し指を唇にあて、考え込むかのような仕草を見せる 「その、モンスターの採取というのはオダイン博士の研究に必要なのかな?」 おそるおそると言った問いかけに、フィーニャは小さく、だがはっきりと頷く 「はい、何を研究するつもりなのかは解りませんが、オダイン博士が必要だと騒いでいます」 “騒いでいる”というフィーニャの言葉に、嫌そうに顔が歪められる 「………その、エスタ国内は軍部が行うとして、他の地は別の者に任せてはどうでしょう?」 恐る恐ると言った一人の声に次々と上がる賛同の声 まぁ、それが無難な選択だよな 「別に軍じゃなくてもいいか?」 ラグナの問いかけに、フィーニャが耳に手を当てる 研究所でここの話を聞いて居るオダインからの伝言 ―――わかりにくいソレを確認している時間 「間違えの無いデータさえとれればどうでも良いと」 フィーニャの言葉に何人もの人が安堵したように息を吐く 「なら、他に頼むって事になるだろうが………」 ラグナは側に立つ秘書官へと視線を向ける 「頼む事の出来る機関は決まっていますね」 戦闘が出来て、各国へ問題無く入国する事の出来る組織 そんなものは今の世の中バラムガーデンくらいしかないよな 「んじゃ、研究所からの依頼って事でまわしておいてくれ」 「解りました」 その後の話は特に誰も口を挟む事無くスムーズに処理された |