英雄と情報
(エラー SideL)


 
世界各地から届けられるデータは、まだ全て集まってはいないけれど、モンスターの分布データは出そろった
―――筈だった
「空白地域が存在します」
人払いがされた研究室
今ここに居るのは3人
付近に人影は無く
室内を覗くような装置のたぐいも無いことは確認済み
「空白地域」
「うむ、まだ期日にはなってはいないので確実とはいえぬのじゃが、一部モンスターが出没しない地域があるのじゃ」
オダインがモンスターのデータが打ち込まれた地図を表示する
世界地図の上に一カ所だけ存在している空白
「たまたま現れなかったってことはないのか?」
「ガーデンにも問い合わせを行いましたが、担当者からモンスターの姿を見ないとの返答があったようです」
「モンスターの姿を見ない?」
人に敵わないと感じたモンスターがその人物を回避する事はあっても、モンスターの姿自体を目にしないというのは普通あり得ない事
そう聞いているし
データ上もそうなっている
私自身はこの場所へと赴いた事は無いけれど、エスタの大地の上でも概ねそのような感じだった
「ここはどんな場所なんだ?」
「それが問題となる」
二人の言葉に会わせるように、フィーニャはもう一枚の地図を展開する
「各地に残る施設―――遺跡の場所です」
ただ一つ残った空間は遺跡の跡と綺麗に重なる
「何があった?」
遺跡の跡である限り本来ならばその質問に対する答えは無い
けれど私は、この場所にかつて何があったのか知っている
私が動いていた時代でも既に施設跡として存在していた場所
「転送施設ですね」
フィーニャの言葉にラグナは顔色を変え、オダインは不思議そうな顔をする
「それはいったい何の為の施設じゃ?」
「………ここだったのか」
オダインがフィーニャとラグナの顔を見比べる
「ま、その名前の通りだな、転送する為の装置がある施設」
「いや、それは想像がつくのじゃが………」
ラグナの様子をうかがい、聞き出すのを諦める
「それでどうしまか?」
「何かあるのかもしれねぇ、けどな」
モンスターが近寄らない………近づく事の出来ない要因が存在しているかもしれない
それは当然考えられる事
「分析出来れば転用できるかもしれませんが?」
仕組みと周辺に住むモンスターの性質によっては今後重要な意味を持つものとなる可能性も考えられる
「研究する価値はありそうじゃ」
フィーニャは黙ってその場所の現在の様子を表示する
遺跡と呼べるものはどこにも残っては居ない
目を凝らすとようやく建物の痕跡かも知れない石積みが転がっている
「何も残ってないようじゃ」
「何か有るとすれば地中でしょう」
上空から映された写真の中に規則正しく並んだ石が見える
地上には何一つ残っていないことは一目瞭然
「とりあえずここのデータに関して問い合わせだろうな」
ガーデン側へこの場所のデータがどういった経緯で用意されていないのか、そちらの方面から話を持っていく事はさほど難しくはないだろう
「それと、いつからモンスターが現れていないのか知る必要があるのじゃ」
オダインの言葉にラグナが同意する
「いつから、ですか?」
遙か昔からモンスターが現れないというのなら、装置がずっと動いていた事を意味している
けれどその事象が最近のもので有れば別の要因が存在する
「どっちにしろ普通のことじゃないけどな」
あの場所に要因があるのだとすれば、多少無理をしてでも調べる必要がある
「調べるのなら引き受けるぞ」
エスタで動くのは難しくても“オダイン”であれば多少の無理は利く
モンスターの出ない場所、それに興味を示して異国だろうとかまわず調査をする
天才ではあるが、常識が可笑しく変わりもの
エスタ内外に知れ渡ったオダインの人物像ならばそれほど違和感ない
「まぁ、その時は頼むわ」
ラグナの言葉にオダインと共にフィーニャもまた頷いた
 
 
 
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