英雄と情報
(チャンス)


 
長い調査はそろそろ終える時期だろう
結局見つかったものは何も無かった
仕方が無い事だ
ここはある程度の調査を終え、何もない事が確認された場所
何も見つけられなかったからといって、それは仕方の無い事
ここでこうやって一人で発掘を続けるのもそろそろ限界だ
いつ帰ろうか
そう考えて、帰り支度も始めようとしていた時に起きた一つの転機
数日前に訪れた武器を持った少女
“モンスターは出ないのか?”
そう問いかけられて
初めてそういえばここに来てからモンスターと遭遇したことは無かったなと思った
最初はそれだけだった
数日
モンスターを必要としているらしい少女が遺跡の近くをうろついていた
正直、モンスターとの戦闘など近くでして欲しくなかった私は歓迎していなかったが
彼女の様子に首を傾げる
一日モンスターを待つ姿
一日モンスターを捜す姿
一日モンスターをおびき寄せようとする行動
―――最後の一つは危険な為やめて欲しかった
一向にモンスターは現れない
可笑しい
ようやく私もそう思い始めた
ここまでやってもモンスターは姿を現さない
ここに居る彼女がどれほどの手練れだとしても、全く姿を見ることも無いなどあり得る話ではない
もしかしたら………
私は遺跡へと思いをはせる
ここには何かモンスターを寄せ付けない仕組みが残されているのではないだろうか?
もしそうであるのなら、もう少し頑張ってみようか
ただ仕方なく取りかかった発掘にわずかな光が見えた気がして、私は気合いと共に再び調査を続けた

「ここで調査をしている学者というのは、オマエでおじゃるな?」
相変わらず一人遺跡の調査をしていた私の元へと現れた集団
突然の事に驚く私へ話しかけたのは
面識は無くとも見覚えのある人物
―――エスタのオダイン博士
「モンスターが現れないというのはここか?ここでおじゃるな?」
立ちつくす私の側でオダイン博士が私の行っている調査を覗き見る
「実に興味深いでおじゃる」
人の集団の中から、女性が一人近づいてくる
「決めたでおじゃる、オダインも調査を手伝うでおじゃる」
彼女の言葉に重なるようにオダイン博士の声が響いた

 

 
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