英雄と情報
(予測 SideL)


 
「仕掛けは有るといえばあるのだと思います」
ラグナと二人だけになると同時に、フィーニャが遺跡の事に言及する
表向きは暴走したオダインの状況を説明しに戻った
実際に先程まで現地でのオダインの様子を説明していた
「ってことは思った形じゃ無いってことだよな?」
モンスター避けの装置
―――それそのもので無くとも良いんだが
それがどこかに埋まっているというのならフィーニャのような言い方にはならないだろう
「はい」
空中へフィーニャが記録したらしい現地の映像が現れる
「なんもないなぁ」
前にも見たが見事な草原
建物の一部も残っては居ないように見える
「残されていたのは建物の一部、柱の根本のみです」
映像が草に埋もれて転がる円柱の石を映し出す
大して崩れた様子も見せない石
「おかしいな」
いくら“石”だからといえ、ここまで形を壊さずに残っている事は考え難い
あからさまにおかしい点だが、誰かがこれを調べようとは思わなかったのか?
「案外気がつかないものだということでしょう」
もしかしたら、気づかなくなるような仕掛けがあるかもしれません
それもある、かもしれねぇな
意識下に何らかの働きをすれば気づかなくなるってのはありそうだな
ただそれも、仕組みが気になるところだけどな
「んで、これに仕掛けがあるってことか?」
わざわざおかしなところがあるものを見せる位だ
確実にこれに何かの仕掛けが組み込まれているってことだろ
「ほんの僅かですが熱反応がありましたし、中が機械になっているのは確かです」
フィーニャが確認したのなら、間違いは無いだろう
「さわったから発動したってことか?」
あの場所に一人の学者がいたという話は聞いている
その学者がモンスターを一匹も見かけていないって証言をした筈だ
本人が仕掛けをいじったっていうんならそれも当然だろう
「そう上手くも行かないようです」
「仕掛けはそれじゃないってことか?」
………そういや、そんな感じの事もいっていったか?
浮かんでいた映像が切り替わる
遺跡の全体図なんだろう草原が見える
「残された柱の場所です」
青い光点が浮かび、そこを起点として光の線が結ばれていく
「こいつは?」
「実際に展開されているモンスター避けですね」
柱を元にしてモンスターを近づけない仕組みが動いているってのは間違い無いみたいだけどな
「柱がモンスターよけの仕掛けである事は間違い有りませんが、この仕掛けを稼働させる装置は別のものです」
「………解るのか?」
見る事はできるだろうが、詳しく中身を分析する事は出来なかった筈だ
「多少推測が混じりますが………」
薄れてはいるがモンスターの痕跡があったこと
間違いなく機械が稼働していること
簡単に調べた結果とはいえ、石の方には稼働させる為の装置が存在しなかったこと
フィーニャが指折り、事例を上げていく
つまりは、装置を動かす為のスイッチがついていないから、違うってことだろ?
「そして、ごく最近動き始めたってことか」
どっかの遺跡が関連してたってことか?
関係しそうな遺跡を思い浮かべようとするが、どれもしっくり来ない
目の前の映像が変わる
ごちゃごちゃと人が集まった光景
光景の一部が切り取られ拡大する
針の先ほどの光がゆるい速度で点滅する
映像の縮小
映像がフィーニャの“目”に切り替わる
「なんかあるってことか?」
フィーニャがどういう基準で何を見ているのかは解らない
聞いたところで理解は無理だ
「戻ってすぐに確認をとろうと思いますが、どうなさいますか?」
どうするって聞かれてもなぁ
目に見える形で確認出来るっていうのなら、それを逃すことは馬鹿げている
「んじゃあ、頼むか」
どんな事をすればどうなるのか、フィーニャには予測がついているんだろう
「では、そのように」
フィーニャが退出するのに続いてラグナも準備の為に部屋を出た
 
 
次へ その頃のスコール