英雄と情報
(戸惑い)


 
エスタの研究員
あの有名なオダイン博士が複数の人々を連れて私が調査する遺跡へと現れた
調査対象は遺跡
というよりも、ここにモンスターが現れないことを調査したいらしい
知りたいことを教えてはくれないオダイン博士にではなく、側に居る助手―――の人だそうだ―――に聞いた所
オダイン博士は元々何かの研究の為にモンスターのデータ集めていたらしく、先日この場に居た彼女はオダイン博士の依頼を受けたSeeDだったらしい
依頼をしていたからこそ、彼女はここにはモンスターが出没しない事を報告し、それにオダイン博士が興味持ったということらしい
オダイン博士が本格的にここを調査するとなれば、私では難しかった大規模な発掘も調査も出来るだろう
けれどそれはオダイン博士が行った調査になる
私の仕事には決してならない
新たな発見が生まれるかもしれない事は喜ばしい
けれど、それが私の手で行われない事は………
言っても仕方の無いこと
私は博士の質問に答えられる限りの事を答えていく
………とは言っても答えられる事はほんの僅か
ここには調査するほどの建物は無く
たった一人で出来る発掘は限られている
私が上げた成果はほとんど無いに等しい
「興味深いでおじゃる!」
そう叫んでオダイン博士が遺跡の中央へと行ってしまう
少しして、向こうの方から叫び声らしきものが聞こえて来るのに不安を覚える
「大丈夫なんだろうか」
思わず漏れた言葉に
「いつもの事ですので」
背後から落ち着いた声が聞こえる
誰もいないと思っていた私は大きく肩を揺らし、勢いよく後ろを振り返る
居たのはオダイン博士の助手の一人らしい落ち着いた雰囲気の女性
オダイン博士が私を質問攻めにしている間も一人あちこちを調べていたのを見ている
何となく目礼をすると、彼女が微かな笑みを浮かべる
「申し訳ありませんが、オダイン博士がここにいる間ご協力願えませんか?」
既に同じ事を他の助手の方から言われている
その件については既に了承の返事をしている
「では、よろしくお願いします」
表情一つ変えずにそう言うと、彼女は再び遺跡の端へと散っていった

「まぁ、オダイン博士のやることですから」
疲れたように男性が言う
オダイン博士が変人だという話は聞いていた
聞いてはいたが………
私は目の前の光景からそっと目をそらす
まだ、実績は上がってはいないが、調査自体は効率よく進んでいるのだと思う
綺麗に区画分けをした場所に見たことも無い機械
一つ一つ丁寧に確認する作業
私が望んでもけして持つことの出来ないエスタの技術
その中でオダイン博士があちこちにいらない手を出している
「いつもこんな感じなんですか?」
私の質問に言葉は返らなかったが
向けられた表情が語っていた

そんな毎日が過ぎて
「時間切れでおじゃる」
オダイン博士が悔しげに口にする
彼等がごり押しした期限が終わる
「成果が上げられなかったでおじゃるが、それは仕方がないのでおじゃる」
少し肩を落とすオダイン博士の言葉に私も同じように残念に思い、少しばかり安堵していた
そして当然のように引き上げていくエスタの彼等の姿
「………よろしければご一緒しませんか?」
今日は近くの村で休むのだと言う彼等に誘われ、彼等と共に久しぶりに遺跡を後にした

 

 
次のラグナサイドへ  次のスコールサイドへ