(推測 SideS)
エスタの研究員以外のただ一人の人物 彼が三ヶ月前からこの地を調査しているという人物 モンスターの姿を見たことがない そういう話だ だが、ここにモンスターが出現しない訳じゃない事は刻まれた跡が物語っている 三ヶ月前から一度もモンスターを見てはいないというが、そう証言しているのはあの男だけだ はっきりとした証拠が在る訳じゃない 他に長期間モンスターの姿を見ていないと証言している人がいる訳でもない 本当にモンスターがいなかった事を証明出来る訳じゃない SeeDが一人、モンスターが出ない事を確認したというが、それもわずか数日 その程度の期間なら偶然という事も充分考えられる オダインがいつもの調子で男に向かってまくし立てている姿が見える 明日になれば現れるかもしれない 明日はまだ現れないかもしれない もし、モンスターが現れない日々が続いたとしても、モンスターが近づかない何らかの要因がここに在る そう結論づけるにはそれなりの期間が必要になる 結論が出る前の段階でモンスターが現れる事があったとしても それなりの実績が在ればそれに見合った調査がされる筈だ モンスターの気配は感じない 一カ所に集まった研究者達へと視線を向けた後、スコールは跡地らしい所をゆっくりと歩き出す さっき見つけた戦闘跡は古いものだった 彼がここに来る前、この現象が起きる前のもので間違いはない 「他があるかもしれない」 研究者達から離れた場所へと足を向ける 次第にオダインの声が小さくなっていく 外側へと向かっていた足が止まる 何かを覗き込むように屈み込む姿が見える 何をしているんだ? フィーニャが両手で押さえた何かを覗き込んでいる 何か見つかったのか? 信じていないくせにそんな事を思う自分に頭を振り、フィーニャの側へと近づく 「何をしている?」 スコールの声にフィーニャが立ち上がりゆっくりと振り向く 「調査ですね」 身体の陰に隠れていた位置にあるのは“石” 「調査?」 「はい、ここに残されたものは、柱以外は有りませんから」 柱? 確認は終わったとばかりにスコールに背を向けフィーニャが立ち去る 入れ替わるようにスコールは石へと近づく 見える部分はただの石だ つま先で触れた感触もその辺にある石と変わらないように感じる 振り返った背後ではフィーニャがまっすぐにオダインの元へと向かっている 見渡した目に移るのはさほど高くは無い草の姿 ここが遺跡だという証拠はここにある石だけ 「遺跡、か」 ここは遺跡として随分有名な場所 この遺跡が見つかった時は、もう少し遺跡らしい形をしていたのか? スコールの目には真っ平らな草原が見える 遮るものが何もない地形 ここに建物が存在していれば遠くからでも発見する事が出来る 発見されるまでもなくずっとここに存在していた? それなら、ここが初めて認識されたのはいつだ? もう一度柱だという石へと視線を落とす スコールは遺跡の外周に沿って歩く 綺麗に湾曲した曲線 人工的な丸み 規則だたしく配置されたそれは、誰かが石をここに置いたという訳ではなさそうだ ふと思い立ちスコールは剣先を石へと向ける 堅い手応えと強い衝撃 高く音が響く 力を込めた筈の柱にはひび一つ入らない 石ではない? 「どうかされました?」 もう一度力を込めようとしたスコールの背後からフィーニャが声をかける さりげなく側に寄り、手元が覗き込まれる 「………唯一の調査対象ですから壊さないでください」 フィーニャの手がスコールの動きを止めるように腕を押さえた |