英雄と少年
(現実 SideS)


 
セントラ時代の遺跡
何も残っていないそれはずっと昔から遺跡として存在していた
ガルバディアが誕生する前からそこにあり
そこに遺跡が在ることを人々は知っていた
その頃からそこには何も残っては居ない
ただ、周囲を込む柱の根本だけが残っているだけ
その状態は今と同じ
昔も今も変わらない姿
変わらない
風化する事も位置を変える事も無い石柱
それがあるからこそ、セントラ時代の遺跡だと証明された
あそこでモンスターが出没しない
そんな記録はどこにも無い
むしろあの場所でどんなモンスターが出現するのか
近隣の村には注意事項が存在している
近隣と変わらないモンスターの種類
あの場所が草原であるからこそ、モンスターに視認されやすいといった注意事項
それは、あの場所で少なからずモンスターと遭遇する人間が居るという証明だ
スコールは遺跡へと何度目の足を運ぶ
モンスターが現れない場所だという事実は成立しない
けれど
あの場所にはオダインが居る
遺跡に手を伸ばしている事を考えればあの場所には何かがあるのかもしれない
遺跡に向かう途中に有る村で、オダイン達一行と遭遇した

夜の遺跡にたたずむ人影
何もない草原では距離があっても人の姿がよく見えた
「何でここに居る」
居るはずのないラグナの姿に自然に声がこわばる
ここには何か裏があるのか?
「オダインの回収だな」
そのついでにここに寄った
そういうラグナには気負ったような様子は見えない
それを信じても良いのか?
「モンスターが出ないなんてなぁ、気になるだろ?」
ラグナが笑ってそう告げる、が
ここにモンスターが出ない
それは事実じゃない
ここにモンスターが出る痕跡は様々な形で残されている
それに、わざわざ自分の目で確認に来るほど
「興味あるのか?」
ここにはオダインが来ている
オダインならきっとここの調査結果だけでは無く、周囲に残された事実も調べ上げるんだろう
変人だが、それ位の実力は有るはずだ
「モンスターが現れなくなるんだろ」
そういう話だった
「そんな技術があれば安全に暮らす事が出来るだろ」
モンスターが近づかない都市でも作りたいのか?
「そもそもモンスターが現れないのなら、不安に思う事もないだろう?」
安心した生活が送れる
それはその通りだ
「だが、ここはモンスターの痕跡がある」
確かにモンスターはここに出現するという証拠
そして草原だからこそよく見える視界にモンスターの姿が見える
「モンスターが出ないってのは、間違っているみたいだしな」
ラグナの声が静かに聞こえる
数を増やし近づいてくるモンスターの姿
スコールはガンブレード静かに構える
「小休止でもしてたのか」
数が多い
普通には見られない程のモンスターの集団
「倒さない事にはどうしようもないな」
こちらを伺うようにゆっくりとモンスターが近づいてくる
ラグナがマシンガンを手に取る
用意が良いな
詳しく見えるようになったモンスターの中に特殊な力を持つものは居ない
比較的弱いモンスターばかりだ
ただ、数が多い
スコールはゆっくりと足を踏み出す
一度に大量のモンスターを相手にするには、ガンブレードは少し分が悪い
スコールが動いた事で、周囲のモンスターに動きが出る
強く地を蹴るのと同時に、連続した銃声が響く
スコールはラグナの背後、突出したモンスターの群れに向かって剣を振るう
重い手応え
動きに合わせてモンスターがなぎ払われる
一度に相手に出来る数はたかが知れている
一度に倒せる数はもっと少ない
それほど広くはない範囲
突出しようとするモンスターへとスコールは剣を振るう
少しずつ倒れたモンスターの数が増えていく
じりじりと近づくモンスターの数が減る
警戒したようにこちらを伺う目
これだけの数全てを相手にしようとは思ってはいない
おびえて逃げるのならそれで良い
短いとはとても言えない時間が過ぎ、スコールはブレードを振るう手を止める
遠目に逃げ出すモンスターの姿が見える
一度大きくガンブレードを持った手を振り、仕舞う
視線の先並ぶ無数のモンスターの死骸
エスタの研究員達は明日エスタへ戻ると言っていたが………
一人元からここに居たらしい人物の事が頭によぎる
面倒だな
スコールは小さくため息を吐いた
 

 
 
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