(現場 SideL)
「本当に何も無いな」 何度か見た草原の映像 目の前にはそれと同じ光景が広がっている 違うのは、見せられた映像が昼間のものだったが、今は夜だってことか 柱以外残骸すら残ってはいない遺跡 ラグナは残った柱の根本に近づき手を触れる 堅い石の感触 「普通、だな」 見た目も触った感触もよくある石だ ここにこれが置かれた時間を考えれば、とても普通じゃないけどな 背後から近づく気配にラグナは立ち上がりゆっくりと振り返る 「なんでここに居る」 相変わらず不機嫌そうな顔をしたスコールの姿 「オダインの回収だな」 そのついでに、ここにも寄ってみたって所だ そうあからさまに嫌そうな顔をされるとな さすがに傷つくんだけどな 「モンスターが出ないなんてなぁ、気になるだろ?」 ラグナは笑って言葉を続ける どうせスコールがここに居るのだって似たような理由だろ 「興味あるのか?」 そんな意外そうな顔をされてもな 「モンスターが現れなくなるんだろ」 モンスターが近づかない 「そんな技術があれば安全に暮らす事が出来るだろ」 モンスターに襲われる事が無い 世の中のほとんどの人間は大概のモンスターと渡り合うだけの力はない 強いモンスターが襲ってきたら、助けの手が間に合うことをただ祈るしかないんだ 「そもそもモンスターが現れないのなら、不安に思う事もないだろう?」 それも、仕組みを解明したい理由の一つ 「だが、ここはモンスターの痕跡がある」 スコールの言葉にラグナは軽く頷く ここにモンスターが出没していた形跡がある事は聞いている それに……… 「モンスターが出ないってのは、間違っているみたいだしな」 遠目に見えるのはモンスターの姿 一匹、二匹じゃなく、集団で集まって来ている ラグナとは違う方向へと目を向け、スコールがガンブレードを構える 「小休止でもしてたのか」 あちらこちらから現れるモンスターの姿 無理に押しとどめていた反動が出たのか それとも、逆にモンスターをおびき寄せる作用でも働いたのか 「倒さない事にはどうしようもないな」 ラグナは持っていたマシンガンを構える モンスターの姿が近づいてくる ちらりと、スコールの視線がマシンガンへと向けられる 近づいてくるモンスターの中にやっかいな奴は居ない 適当に攻撃すればそれなりの成果が上がる筈だ 久しぶりにこいつをひっぱり出してきたのは正解だったかもな これを持ってきた事に意味は無い、ただなんとなくだ ラグナの隣をスコールがすり抜けていく こちらを伺うようにゆっくりと近づいてきていたモンスターがスピードを上げる 指をかけていた引き金を引き 耳に響く音と連続した衝撃 軽く身体の向きを変える 銃口の動きに合わせて、モンスターが倒れ あるいは怯む 時折混じる単発の銃声 背後へと一瞬視線を向け ラグナは広範囲へ向け引き金を引く 単発のモンスターが相手ならともかく こうも数が多いとああいった武器は面倒だよな 数歩足を動かし、方向を変える 「ま、若いからな」 あれだけ派手に動いても体力は持つだろ 指が軽い手応えを伝える 反射的に大きく後退し、弾倉をマシンガンへと突っ込む さほど長くは無い時間 モンスターの距離が短くなっている ま、なんとかなるだろ 軽く重い感触 そして衝撃 それほど長くは無い時間 ようやくモンスター達の数が減る 逃げたな 掃討を目的としていた訳じゃない以上、逃げようとこの際関係はない さらに時間が経過し、動いているモンスターの姿が無くなったことを確認して手を離す 辺り一面に散らばるモンスターの死体 「………明日は騒ぎになりそうだな」 ラグナは近隣の村に滞在中の研究者の姿を思い浮かべた |