(疑問 SideS)
倒れ伏したモンスターの姿 ほの明るい月明かりの下に浮かぶ惨状 埋め尽くすとはとても言えないが、団体行動をとることの無いモンスターがこれほど横たわっている姿は異様な光景として目に映る 辺りを伺うスコールの視界中で、幾つも転がるモンスターの死骸へとラグナが視線を向ける 「ここいらに居るヤツか?」 ラグナの言葉に改めて一体一体のモンスターを見る 倒れたモンスターはこの周辺に生息している種 先日の調査の結果でもそう判明している 「おかしな奴は混ざってはいない」 この辺りでは見ないようなモンスターは入ってはいない ここに居るのはこの辺りで良く見かけるモンスターばかりだ 居るはずの無いモンスターが混ざっているという事はない スコールは足下に転がるモンスターへと視線を向ける このモンスターは単独行動が基本だ 今回のように集団で現れるという事は普通無い 「しかし良くここまで集まったな」 どこか感心したようなラグナの言葉に内心頷く 元々この辺りに生息するモンスターはさほど強いものは居ない そして好戦的なものもいない 普通ならこの状況はあり得ない 何か有るのか? モンスターが近づかない その話は信用出来ないと思っていた 事実大量のモンスターが発生した それが、何らかの仕掛けによって動いたものだとしたら? ラグナが遺跡の残骸へと足を向ける様子が見える 何かおかしな所でもあるのか? 「さすがにオダインも諦めるだろうな」 様子を伺えば、少し大げさに肩を竦める姿 「良いことなんじゃないのか」 ラグナがこの状態をどう思っているのかは解らない 「この状況になんの文句も無ければな」 無難な言葉にため息混じりの言葉が返ってくる モンスターの状態に不信は覚えていないってことか? ラグナの様子を伺いながら、言葉の意味を考える スコールは辺りの惨状に目を向ける 辺りに散らばったモンスターの遺骸 戦闘の結果荒らされた場所 改めて目にすれば辺りは酷い状態だ 調査を終える事が決まっていたとはいえ、この状態には文句の一つや二つは出るだろう オダインを普通に相手にするのも嫌だが、この状況ではきっと面倒な事になる 「………今の内に帰るか?」 嫌そうなラグナの声が聞こえる オダインの相手をしたくないって気持ちは分かる だが、あんたはその為に来たんじゃないのか? 「押しつけるのか?」 「いや、そういうわけじゃないんだけどなぁ?」 思わず口にした言葉に、口ごもりながらの言葉が返る ラグナの表情が嫌そうにゆがむ 「なんかエサでもあれば良いんだろうけどな」 そう言ったラグナの視線が足下のモンスターへ向けられ、否定する様に微かに首が振られる モンスターは充分な餌になるんじゃないのか? 世界各地のモンスターのデータを収集する ガーデンが請け負った仕事の依頼主はオダインだ ここは唯一データが集まらなかった場所 「………モンスターを持っていったらどうだ?」 欲しがっていたものを提供するなら、充分取引材料になるだろう そう思って言った言葉はラグナの反応はあまり良くない 「そりゃ手かもしれねーが、オダインもここに来るんだぜ?」 言われた言葉を頭の中で復唱する あちこちに転がったモンスター達 明日帰還予定だとはいえ、ここに立ち寄る位はするだろう むしろ、この惨状を耳にすれば積極的に足を運ぶか? 依頼は、自分では手を出せないからこその依頼だ わざわざ差し出さなくとも、この状況なら自分で好きなものを採取することが出来る それを思えば確かに取引材料にはなり得ない 「ま、どっちにしろ、ここにいたって仕方ないしな」 そう呟いてラグナが遺跡の外へと歩き出す ―――本当に? ここに居ても何も得るものはないんだろうか? スコールは改めて辺りの様子へ目を向ける あり得る筈のない光景 普通とは違うモンスター達の動き 気が付いていないのだろうか? いや、ここに居るモンスター達の特性をラグナは知らないんだろう モンスター達を越えた所でラグナが振り返る 「スコール?」 留まったままのスコールへ対してかけられる疑問の声 スコールはただだまったまま、先に行けと意志を込めて手を振る 調べてみる必要があるかもしれない 月明かりがモンスター達が不気味に照らしていた |