(呆然)
朝早く 遺跡へと戻った私達の目に入ったのは大量のモンスターの姿 モンスターの姿とは言ってもそれは既に息絶えたもの その死骸の合間に 生きたモンスターが闊歩している 「増えそうでおじゃるな」 その様子をじっと見ていたオダイン博士がため息混じりに告げる モンスターが流した血の臭いがモンスターを引き寄せる 今までの反動のようにモンスターで一杯になったこの場所では、当面の間調査をする事など出来ない ………いや、モンスターがこれほど大量に発生した時点で、調査の必要は無くなったのかもしれない この場にモンスターが現れないという話は消えて無くなったのだから 「しばらく手をつけるのは無理なようですね」 「ええ、そうですね」 エスタの人達と遠巻きに遺跡を眺めながら私はただ肩を落とす 気の毒そうな視線が幾つか私に向けられている しばしの間、遺跡を闊歩するモンスターの姿を眺め、誰からともなく遺跡を後にする 私もまた、彼等に続き遺跡を後にする モンスターのはびこる場所にただ一人残るなど出来る筈もない ため息が零れる 上手くは行かないのか 純粋に調査をする為の遺跡としても、あの場所は当分使う事は出来ない これからどうするべきか エスタの人々を見つめながら先を考え思い悩む できるならば彼等のように学者として“国”に属する事が出来ればどれだけ楽だろう 長くは無いが短くも無い時間 友人と呼べる位には親しくなっただろうか? 聞くだけ聞いて見ようか? 内心首を振り、考えをうち消す 彼等がエスタの人間で無ければ、職の当てを聞くことも出来た だか、彼等はエスタの人間 あの国が以前とは違い開かれている事は知っている だがそれは、一時的な観光目的に対して 定住し職を得たという話は聞いたことが無い それに彼等は国付きとはいえ一介の学者、入国を許可する権限なんて持ち合わせていないだろう 重い気持ちで歩く私の足取りはゆっくりとしたものになっていたらしい 彼等の中の一人に声をかけられる 「一人になると危ないですよ」 タイミング良くモンスターの声が聞こえる 「あ、そうですね」 私は慌てて、彼等の元へと距離を詰める 「何か考えごとをしていたようですが、どうしました?」 何気なく聞かれた言葉に声が詰まる 問いかけるような視線に押され 「これからどうしようかと………」 気がつけば私はそう言葉を絞り出していた
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