(研究 SideL)
オダインの所にまた一人人が増えた 共に調査に当たった人物 ラグナがあの場所にいた事も調査現場があんな状態になった原因の一つ 結構強引な理屈と共に その責任を取るといった形でエスタへと迎えられた学者 報告は瞬く間に広がり すぐさま人の話題に上らなくなる オダインのやる事にいちいち反応していたら身が持たない 誰かがいつか言った言葉は真理として受け入れられている ま、余計な詮索が無いってのは良い事だよな “国”としてはどうかとも思うが、その辺りの部分は薄々気が付いてはいるんだろう 「それでどうするんだ?」 機械の音が響くいつもの部屋 ラグナは部屋へと現れたフィーニャに声を掛ける 突然の言葉に、僅かに戸惑うような素振りを見せるが 「今は何も」 何も無かったかの様に返事をする 「何も?」 薄闇の中で小さくフィーニャが頷く 「今はまだ打つべき手も、探るべき事柄もありませんから」 遺跡と発動した仕掛け 有用ではあるが、今必要では無い代物 仕組みが解った所で、使えない可能性も高いからな フィーニャが足を止めるのに合わせて、室内が明るくなる フィーニャの手がポケットへと伸び、中から小さな物質を取り出す 「何か解ったのか?」 ラグナの問いには答えず、フィーニャの手から室内に備えられた機械へと手渡される 飲みこむ音 微かな起動音 「収集したデータを纏めたものです」 音も無く宙へと文字が現れる 「モンスターのデータか?」 SeeDに依頼して纏められたデータ そしてフィーニャが保有していた過去のモンスターのデータ 先日見つけた“彼等”の元に眠っていたデータ エスタに月の涙によって現れたモンスターとそれ以前から存在していたモンスター 違いと同一点 細かな説明が明記された文章が現れる、が 文字量の多い文章は目にちかちかしてなかなか読み進めるのが難しい 「説明、頼むわ」 さすがにこれを読むのはきついぜ 「そうですね」 映像が画像へと切り替わる 分析内容が表記されたデータグラフ 「現在エスタに存在するモンスターを分析したものです」 フィーニャの声が、分析結果を語る 遺伝子情報の相違点、一致点 「次に他地域のデータを」 分析されたデータがゆっくりと入れ替わり表示されていく 目に見えた形で示される同じ形 世界各地 種族も違う筈のモンスター 全く同じ値を示す箇所の存在は多いのか少ないのか 「では時をさかのぼります」 遡る時は2つ 「ただ地点が違う為、正確なデータの取得は不可能です」 重なるデータ 全く別物の、データ 「………侵食されてるって感じだな」 表示されたデータの意味合いは良く解らないが 見て解るのは、次第に月のモンスターへと近づいているということ 「こんな風に形態ってやつは変わっていくものなのか?」 フィーニャの時代には存在していたモンスターの特徴が今の時代には消えかけている その代わりとでも言うように、地上に居るモンスターには、月から来たモンスターと同じ特色が増えている ゆっくりとフィーニャの首が左右に振られる 「通常この様な変化の仕方はあり得無い、と言うべきかと思います」 フィーニャの言葉にラグナは映像へと目を向ける 視線に合わせる様に映し出されるモンスターの姿 過去と現在、様々な土地のモンスターが入れ替わり現れる 「どうなさいますか?」 残された情報 様々な経緯で手に入った過去の情報―――メッセージ 情報の欠片を手に入れて、ふと思いついたのはモンスターのデータを集める事 “敵”となる相手の事が何か掴めるかもしれない 大量に蔓延るモンスターを一掃する手がかりが掴めるかもしれない ………そう思ったんだけどな 「どうしようもないよな」 今はまだ手の出しようが無い 「他の情報も集めないとな」 まだ情報が足りない かつて、セントラが保有していた筈の知識 その全ては手に入ってはいない それに今の状況 “今”どんな状態にあるのかは、誰も知らない 夜空に浮かぶ“月”の姿が思い浮かぶ まるで地上を見張るかのように存在する月 かつて、宇宙で見た、月の上をうごめくモンスターの姿 月の上でひしめくように存在するモンスターは、月から溢れ地上へと零れ落ちる 当たり前のように、誰もが口にしていた言葉 それが現象として正しいのかどうなのかは誰も知らずにいる それに――― あの場所にはまだ居るんだろうか? 月はモンスターがはびこる世界 あのモンスターの群れの中に……… 「まだ、動いてるんだよな」 少なくともモンスターが存在している 「時間の経過は問題がありません」 「動いてるもんな」 フィーニャやその他セントラの時代の様々の機械がまだ現役で稼働している 宇宙に上れば月ではまだモンスターがうごめいている 耐用年数が終わったって事は無いだろうな 結局やる事は変わらない 「焦っても仕方がない」 小さく零れ落ちたラグナの言葉に小さくフィーニャが同意を示した |