英雄と情報
(分布 SideL)


 
各地に点在していたセントラの施設
人が住んでた場所の地下にあったものはとうの昔に消滅した
近年見つかった施設は、人里離れた場所にひっそりと作られたもの
かつて在ったという様々な施設
今は存在していない事が判明している場所も多いが
施設の幾つかは今は人も近づかない場所に存在していた
まだ残っているかもしれない
実際に残っていた施設が幾つかある
可能性はゼロじゃない
たとえ完全ではなくとも欠片程度は何か情報が残っているかもしれない
過去の技術
過去の遺産
フィーニャは見つかったモノ達と情報を会わせて遙か昔のデータを集める
「情報が足りませんね」
フィーニャが稼働していた時代、エスタという国はまだ存在していなかった
―――のだと思う
実際は、“外”へと意識を向けたことが無いため詳しいことは解らない
そして、エスタはセントラとは違う国
エスタにあるコンピュータはセントラ国内の出来事を詳しくは知らない
ある程度の情報は回ってくるだろうけれど、それは完全ではない
その上、実際に使うに向かない技術として研究が中断された内容なら余計に情報が回る事は無い
どの位置でどのような実験が行われていたのか、その結果がどうなったのかなど知るすべも無い
それら全てを知っているとするならばそれはセントラにあった筈の統括コンピュータやあの時の………
フィーニャは軽く首を振り思考を停止する
これ以上は“考えて”もしかたの無いこと
目の前に幾つも転がった情報へと手を伸ばす
情報の有益性はともかく、情報を集める事自体は必要
廃棄された研究成果だとしても、何故廃棄されたのか知ることは益になる
「施設の情報は有りますか?」
フィーニャは稼働しているモノ達へと問いかける
それぞれが探し出す時間をおいて
それぞれが提示する情報
いずれも、今の時代からすれば古いものではあるが
その年代は様々
あるモノの所ではまだ存在しないもの
あのモノの所では既に無くなっているもの
世界地図の上に光点が示される
幾つか話し合い
光の色を変化させる
どんな事をしていた場所なのか
何があったのか
結末はどうであったのか
知り得る限り情報を一つずつ書き込んでいく
時代を追って情報を集める事は出来る
けれど、今そこがどうなっているのかは、実際に現場に行って確認する以外に手はない
「結局は今までと同じ」
訪れ
探索する
何かが残されている可能性のあるモノ
何も残ってはいない確率が高いモノ
人が都市を築いた場所には、かつての施設は残されては居ないはず
「それほど多くはないかもしれません」
そうはいっても、人が一人で回るには少し数が多い
回るものに役職がついているのなら尚更
私の考えに戸惑うような問いかけが届く
「ご自分でなされようとするでしょうから」
他の人の手を借りる事無く
出来る限り自分の手で決着をつけようとするのでしょう
けれど
「誰かの手を借りる必要はあるでしょう」
ただ一人で全てをこなす事は不可能
味方になるだろう、戦力になるだろう人物は思い浮かぶが、それは、許されない事
そして、私では―――私達では役には立たない
「人材も集めたいですね」
私の声は誰にも伝えられる事無く闇に解けた

今までと変わることなくゆっくりと情報が集められ
幾人か人が追加されて、少しずつ探索の手が広げられた
 

 
 
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