英雄と敵
(はじまり)


 
轟音とともに土煙が上がる
誰かが上げる悲鳴にせかされて、一目散に走る
数分
もしくは何十分後かに
ようやく耳に響いていた音が止む
息も絶え絶えに、崩れ落ちた足下にはなおも土煙が降ってくる
誰からとも無く手をさしのべあい
なおその場所を離れる
誰もが無言のままただ黙々と足を動かした

視界を埋め尽くした土煙が晴れたのは翌日の事
眼の前に現れた光景に誰もがただ呆然と立ちすくむ
ずっと見慣れた光景は何処にも無く
眼の前にあるのは、見たことも無い代物
「ありゃ、なんだ」
誰かが上げた言葉が耳に響く
あれはいったい何だ?
頭いっぱいに広がる疑問
「ありえねぇ」
自分が言ったのか、誰かが言ったのか、呆然とした言葉がこぼれ落ちる
生まれたときからずっとそびえ立っていた山が途中から崩れ落ちていた
その代わりとばかりにつきたっているのは一本の棒
俺達はしばらくの間その光景をただ見上げていた

  

 
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