英雄と敵
(現地)
長年見続けた光景とは違う見慣れない光景
生まれた時からあった山の姿はその大多数が消え去り
その代わりとでも言うように、細長い塔のようなものが聳えている
「あの光景もだいぶ見慣れてきたな」
聞こえてきた言葉に頷きながらも
「あんなもの見慣れてたまるものか」
否定する
「あんな薄気味悪いもの」
「何か狙われているような気がする」
それがこの村に住む大多数の意見だ
まるでそれを肯定するかの様に、山の中腹に埋もれていた筈の塔が少しずつ姿を現している
今も、山が崩れている証拠
山―――いや、以前山だった場所から土が流れてくる
あの日のように一度に大量の土が流れることはないだろうが、そのうち飲み込まれるんじゃないかと怖くなる
村人の大半が、不安そうに山を見つめる
“近いうちに調査が入る”
あの日慌てて国へと連絡をした村長はそう言ったが、来るはずの調査って奴はいっこうに来る様子が無い
「あれは本当に大丈夫なのか?」
声を潜め物陰でお互いが不安の声を上げる
「そもそもあそこに調査なんて行けるのか?」
日々大きくなっている気がする塔の姿
そいつはまだ山が崩れているっていう証拠だろう
「本当に調査なんて来るのか?」
顔をつきあわせればそんな話ばかりが続く
村に“先生方”が増えた
突然現れた塔の調査をしに来たって言う先生方だ
調査に北っていうんなら、さっさと“山”に向かったら良いだろう
そう思ってたんだが、“安全”の確認がされていない為近づく事は許可されていないっていう話だ
………まぁそれも村長がそう言ったんだが
最初は仕方なさそうに待機していた先生方も、始めの一人から二人、三人と人数が増えるにしたがって様子が変わってきている
村長や俺達の制止なんか振り切って、こっそりと山に向かうだろう
俺達も警戒し見張っているが、そろそろコレも限界だ
村長は国に連絡を取っているみたいだが………
村外れから騒ぎが聞こえる
舌打ちとともに何人かが騒ぎの方へと走り出す
どうやら懸念していた騒ぎが起こったらしい
どっかのお偉い先生を止める為に俺も騒ぎの方向へ走った
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