英雄と敵
(疑問 SideL)


 
「あの建造物は何でしょうか?」
エスタ研究所オダインの研究室
フィーニャはガルバディアへと現れたという建造物の映像を見つめる
「何とは何でごじゃる」
フィーニャの呟きを耳に留めたらしいオダインが言葉を述べる
「………あの場所にある意味と役割です」
フィーニャは少し考えるようにして言葉をつなぐ
「ふむ、確かに山の中にあったことを思えば興味深いものでおじゃる」
オダインが映像へと視線を向ける
山の中腹から生えた塔の姿
塔の一部、もしかしたら大部分はまだ土の中にある
見えている範囲には入り口やその代わりになるようなものはひとつも無い
「あそこは誰が研究するのでおじゃる?」
映像を拡大し様々な角度で見つめていたオダインが振り返り問いかける
「私は存じませんが?」
「ふむ、ならエスタからは向かっていないでおじゃるな」
フィーニャは一瞬中に視線を走らせ
「現在“エスタ”ではあの建造物がセントラに関連するものであるかどうか調査中の模様です」
収集した現状を答える
「ふむ、ではフィーニャはあれの事を知らぬのでおじゃるな?」
「はい、私のデータベースにはあのような建造物、もしくは類似する類のものは乗ってはいません」
正確には私だけではなく、他のもの達もあのようなものの存在は知らない
「では、あの場所にある“山”のことはどうでおじゃる?」
「山、ですか?」
オダインが得意そうに胸を張る
「そうでおじゃる、あそこは山に埋もれていたでおじゃる、ならば山があった時代には、もうあの塔は山の中ということでおじゃる」
「確かに博士の言うとおりです」
フィーニャは言葉と同時に様々な記憶を探る
もちろんすべてのものがあの場所の情報を持っている訳ではない
遠隔地のもの
地形に関して関わりの無いものは
あの場所事態の情報を持たない
―――私も情報を持たないものの一つ
むしろあの場所の情報を持つものの方が数は限られて………
「とても古いもののようです」
「ずっと山だったでおじゃるか?」
エスタのマザーコンピュータに残された情報には、あの地には変わらず山があったことが記されていた
 
 
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