英雄と敵
(把握 SideS)
キスティスが依頼を受けたガルバディア“塔”の調査
依頼自体は引き受けたキスティスが責任を持って任務に当たっている
調査依頼自体には期限は設けられていない
つまりは
今すぐの調査を望んでいるのでは無く、調査はある程度安定をしてから
今は、あの場所に集まっているというやっかいな人物達の相手をしろっていうことだろう
様々な役割が組み合わされた依頼内容
時間的にも長期化することは必至
「割に合わない」
報酬としてしめされた金額は高額だが、依頼内容と見合わせればそれほど高いという訳じゃない
キスティスから送られてきた現在の状況と報告書へと目を通す
どこからともなく集ってきているという様々な分野の研究者達
そして現地に行く前に交わされた約定
現状ガルバディア軍の派遣は無い
SeeDによるある程度の調査が終わった後に交代する形でガルバディア軍は派遣される
表向きの理由は、先の戦闘行為に寄る人員不足
あり得るかもしれない理由ではあるが、その為に軍が派遣できないというのはただのいいわけだろう
面倒ごとをこちらに押しつける
その為の依頼
そしてその試みは今のところ成功を収めている
キスティスからの報告をみるに、山から崩れる土は未だ止まる様子はない
村から見える塔の姿はまだ全容は現れていないという
このまま当分の間足止めされるのは必然
キスティスからの報告書には“空”からの接近ならば近づく事も可能と書かれてはいる
だが、簡単に空からの接近とは言うが
「手段が無い」
ガーデンが所有する乗り物の中には残念ながら空を飛ぶものは無い
まさか、ガーデンを出せとは言わないだろう
確かにガーデンであれば目的を果たすことはできるが、ガーデンを使えば様々な軋轢が生じる
では、空をとぶ乗り物を所有する所から借りる事を考えるが
それも現実的じゃない
ガルバディアは低空を飛ぶ物しか所持してはいない
高い高度を飛べる物と言えば当然エスタの物だが、考えるまでもなくエスタが所持する物がガルバディアに入るのは無理だ
秘密裏にならいろんな物が侵入していそうだ
今回は、ガルバディアの依頼を受けている以上秘密裏に調査する訳にはいかない
必然的にキスティスの案は却下だ
「時間がかかるな」
溜息とともに呟いた言葉に、同意の視線が送られた
次第に村の様子がギスギスした空気に変わってきている
幾度と無く暴走を繰り返す研究者達とソレを止める村人との間に広がっていく亀裂
そして、名を挙げようとする者達が少しずつではあるが増えてきている
おかげで余計に仕事は増える
勝手をする彼等のおかげでますます亀裂は広がっていく
「調査どころの話じゃないわ」
はっきりと言葉にだしはしないけれど、思わず愚痴がついて出る
………まぁ、調査と言っても今の所はどうする事もできないけれど
依然、流れ出る土は止まってはいない
上空から近づくという手段も実現は難しい
今の所手詰まりだわ
依頼の達成は、簡単な調査をするということ
ソレを実行しなければ依頼を終了しこの地を離れる事はできない
今後はもう少し慎重に依頼を受けるべきかしら
………いえ、受けるべきでしょうね
後悔とともにキスティスは今後の依頼の受け付け方を考える
「キスティスさんっ」
一緒に来たSeeDの泣きそうな声が聞こえる
また?
そう問いかけたい言葉をぐっと飲み込む
「今行くわ」
今日になって何度目かのトラブル
まだ夜中に脱走しようとする者が居ないのが救いだわ
きっと、それも時間の問題
先に行く彼等に気づかれないようもう一度深く溜息を吐いた
次へ その頃のラグナ
|