英雄と敵
(調査)


 
山の崩壊が止まった
それに気づいた“私達”は我先に山へと近づこうとした
崩れ続ける山が危険だと言うのなら、崩壊が止まったのならば近づいてかまわないだろう
そう思うのは当然だ
だから、私達はその考えを元に山へと向かう準備を始めた

「山への立ち入りは禁止よ」
ここ最近、私達と対立していたSeeD達が再び私達の前へと立ちはだかる
「もう山の崩壊は止まった、立ち入ったところで問題は無い筈だ」
誰かが言う言葉に、私達は次々に同意の声を上げる
「あなたたちの立ち入りは、ガルバディア政府から許可をされてはいないわ」
良く通る声で言い切った彼女の言葉に私達は思わず言葉を失う
「だが、あの場所は───」
「あの場所は間違いなくガルバディアの土地だわ」
挑発するかの様な彼女の言葉
それと同時に周囲に居る者が私達へと向けて武器を向ける
荒事になれては居ない私は、武器を向けられている事で動揺するが、何人かは武器を持つ彼女等へ向けて果敢に向かっていく
「ガルバディア政府との取り決めでは、私達が安全を確認しない間は誰もあの場所に近づく事は許されていないわ」
いつの間にか手にした鞭を構えながら、彼女が一歩近づいてくる
「それとも、ガルバディア政府からの許可を持っているのかしら?」
彼女の手の中で鞭が乾いた音を立てる
声を上げていた何人かが、何かに押されたように後ずさる
「明日まで様子を見て変化が内容ならば、確認に向かいます」
私達の誰も声を上げないことを確認し、彼女が宣言する
「その後、各自ガルバディア政府の許可を取ってもらえるかしら?」
問いかけの形をとってはいるが、それは明らかに命令だ
私は当然、彼女の言葉に首を縦に振る
大半の者が私と同じ様に彼女の言葉を受け入れる
幾人か不満そうな顔をしている者はいたが、面と向かって反抗する者はいない
………いや、残ってはいない
そう言うべきだろう
この村に到着し、消して短くは無い時間が過ぎた
この間、彼女達の言葉に従っておとなしく待っていた者ばかりではない
ここに集った者達の中には様々な者が居て
功を焦った者
財を狙っていた者
自分自身の腕に自信があっただろう者
そう言った者達は彼女達の言葉を無視し、村人達の制止を振り切りあの場所へと向かった
向かいはしたが、誰一人たどり着いてはいない
彼女達の手で捕縛され、連れ戻され、どこかへと送られていった
今ここに残っている者達はその様子を見ている
もうじき地様さする事ができるというのなら、態々今刃向かう事は無いだろう
私は───私達は彼女へと背を向け村のなかへと戻る
振り返った先に見えた山の姿はまるで私達を誘うように輝いていた

 

 
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