英雄と敵
(塔)


 
安全が確認された
その言葉を聞いてから数日
ようやくガルバディア政府の許可が下りた
もっとも、許可が下りたとはいっても、様々な誓約書に署名をさせられた上での許可だ
生命の責を負わない
私達学者としては覚悟をしている内容を始め
不必要に“塔”に触れない等
不満が残る内容までそれこそ様々だったが、まだコレは一度目だ
近づきさえすればチャンスは回ってくるはずと信じ、今は理不尽な誓約書に署名をしただけの事
あの場所に集まった物達のうちの何人かは誓約書の内容に納得がいかないと抗議の声を上げている様だが、それも現地に行くことが出来ないのであればどうしようも無い事だろう
今は内容はともかくとして、一国も早くあの場所にたどり着く事
そして、誰よりも優先してあの場所を調査する事がまずは優先だ
あの面倒な誓約書
あれは、その場に行けばなんとでもなる
ガルバディア兵の見張りが付くって話だが、そう多い数が張り付いている訳じゃない
見張りの目をかいくぐる事なんか造作も無いはずだ
塔へ向かう足を止め、汗をぬぐう
塔の姿が先程よりも大きく見える
足場が悪い為か、いつも以上に疲れ近づくのに時間もかかっている気がしたが、ようやく手の届く所までたどり着いた
自分と同じ様に、塔を目指していた何人かが足を止め塔の姿を見上げている
傍に居た一人と何となく目が合い、無言で歩き始める
今塔を目指している奴等は、全員がライバルだ
彼等よりもわずかでも早く、何らかの手がかりを手にいれなければならない
有益な情報を入手出来れば………
足を取られ掛け、我に返る
まだ塔についてもいない
今はまだ、無事にたどり着く事を考えよう
徐々に近づく塔を見つめ、慎重に足を踏み出した

何の成果もないままに時間だけが過ぎた
地中から生えた塔
その内部へと続くだろう入り口は未だ土の中に埋もれたまま
ここが何であるのか、それを調べる所か、まだ塔の中に入る方法さえも見つかっていない
当初此処に居た者たちも何人かはすでに此処を離れた
土を掘り返す
入り口を見つけるためにそれも必要だろうという話は当然でた
話が出てから様々なところへと話を持ちかけ、協力を要請したが、実現は未だしていない
それならせめて、この建物がいつのものなのか
それを探ろうとしたが、それも上手く行っていない
今日もまた一人、この地を立ち去る者が現れる
「限界かもしれないな………」
何の力も持たない私達がこの場所をこれ以上調査するのは無理だ
何も探れて居ない
そのことに悔しさも感じる
感じてはいるが、個人の力ではどうしようもないのも事実
息を吐き出しながら空を見上げる
空に覆いかぶさるように塔の先端が見える
日の光を反射してか、先端が強い光を放つ
ふと思い出したのは先日“エスタ”へと行った知り合いの顔
「俺も、どこかに所属するべきかな」
呟いた言葉はむなしく響いた

 

 
次のラグナサイドへ  次のスコールサイドへ