英雄と敵
(観察 SideL)
中途半端に崩れた山の中に、半ば埋まったままの塔が見える
村とは逆方向にある険しい山の中腹からその姿を見下ろす
「思ったより狭いな」
円柱型をしているだろう塔の直径は思っていたよりも短い
「あれが全景であるならば、研究施設等ではないと思われます」
ああ、埋まってる可能性ってのがあるか
1度見てみたい
そう告げた言葉は、しばらくの沈黙のあと秘密裏に受け入れられた
お陰でフィーニャを伴い順調に此処まで来ることが出来たが、塔の入り口は土の中に埋もれたままだ
中に入り込むのは一筋縄では行きそうもない
外観を見たってだけでは目的は達成できてないんだよな
塔の上方に窓らしきものが見える
あそこからなら中に入ることも出来るかも知れないが………
あそこまで行くってのはちっと現実的じゃないよな
「中が見たいんだけどな」
外側だけ見ても知りたい事は何も分からない
「今の段階では難しいかと思います」
ラグナの言葉を受けてフィーニャが視線を塔へと向ける
そりゃー見れば分かるけどな
「現在、ガルバディア政府が掘り起こしの作業をしていますが………」
無難だけどな、それではいつになるか分からない上に、招待された状態では目にする範囲が限られてくる
「入り口をこじ開けますか?」
出来るのか?
そう言い掛けて
「気づかれないんならな」
出来るだろう、と納得する
フィーニャが辺りへと視線を向け周囲を確認する
「しばらく時間が必要だと思われます」
埋まってるからな
「………作業を開始しますか?」
「気づかれないならな」
「それは当然、ですね」
そう言いながらフィーニャが何かを考え込む仕草をする
塔から少し離れた場所で何やら、作業をしている人々の姿が見える
彼等から少し離れた場所で辺りを警戒する護衛の姿
その中に見知った姿が見える
「SeeDだな」
「ガルバディア政府の依頼でそのまま護衛の任務についているようです」
そういや、牽制してたな
そのまま仕事内容を変更したってとこか
「難しそうだな」
「はい、当分は大人しくしているべきかと」
この状況で彼等に気取られず進入口を確保するのはさすがに無理だろう
………案外遠くから地中を掘り進めれば可能かも知れないけどな
「仕方ない、しばらく待つか」
「それが良いかと思います」
出来れば手を加えられていない状態で確認したかったが、それが必ず必要って訳じゃない
“塔”は稼動していない
「危険もないだろうしな」
機械の原型は残っていても稼動はしていないだろう
そう思っていた
次へ その頃のスコール
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