英雄と敵
 (依頼 SideS)
  
      
 
 ガルバディアに出現した塔 
辺りを覆っていた土───山───はある程度崩れ 
中途半端な位置で停止した 
再び動き出す可能性も考慮し、慎重に探った結果 
完全な停止と結論づけられたのはつい先日の事 
塔に至る道の確保と周囲の安全の確認 
それらを終え、任務完了の報告が上がったのはつい先日の事 
許可が出るまでの間 
近隣の村には自称“学者”達が溢れていたらしい 
もっとも、いくら早くから待とうと、彼等が中に入り調査を始められるのは随分先の事になる 
すべてはガルバディア政府の調査が終わってからの事 
国の対応としてはそんなものだろうと思う 
「護衛依頼が来ているのよね」 
キスティスがガルバディアからの依頼が書き込まれた用紙をひらひらと靡かせる 
「なんの護衛だ?」 
「発掘作業の護衛ね」 
半ば埋もれたままの“塔”の発掘 
個人的には遺跡自体に興味は無いが、発掘は必要なことなんだろう 
だが 
「SeeDに依頼する内容じゃ無いよな」 
ゼルが肩を竦める 
「そうね、けれど貴重な依頼であることは間違い無いわ」 
SeeDが引き受ける様な依頼では無い 
それは同時にSeeDに頼むような依頼でも無いということにならないか? 
「なぜ依頼を出したんだ?」 
小さな声でスコールが呟いた言葉は周りには聞こえなかったらしく、彼等は依頼をどうするのか相談を続けている 
SeeDに手を借りる必要があるとは思えない些細な依頼 
それは、SeeDの手が必要になる危険性があるということかもしれない 
発掘の際に土が流れる事 
それを危険視する動きは当然あるだろうが、それに対してSeeDの派遣はやり過ぎだ 
SeeDに求めているものは当然戦闘能力であるはずだ 
なら、ガルバディアは何らかの戦闘があり得ると考えていると思って良いんじゃないか? 
現れた塔は間違い無く古い時代のモノ 
今までの傾向から内部に何らかの仕掛けがある可能性は大きい 
そう予想する事は出来る 
たが、 
「ガルバディアが関わった事があったか?」 
セントラ時代の遺跡が発見され始めたのはここ最近の事 
そのほとんどはエスタの手によって行われている 
内部にどんなものがあったのか 
どんな攻撃が行われていたのか 
それを知っている者はいないはずだ 
モンスターを警戒している 
あの場所が地中に存在していなければその可能性もあったかもしれない 
ああ、今までの話を聞いた上で何かがあることを推測した可能性はあるのか 
スコールは何気なくキスティスが置いた依頼書を手に取る 
発掘の際の護衛 
……………… 
塔の中に入る以前の護衛なのか? 
それなら、中がどうなっているのかは関係が無い 
考えられるのは─── 
「とりあえず、ランクの低い子達を派遣しましょう」 
話は進んでいたらしい、キスティスの声が聞こえスコールへと許可を求める 
「………いいんじゃないか」 
スコールの言葉に、選別が始まった 
        
      
 
  
       
  
  
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