英雄と敵
(認識 SideL)


 
僅か一瞬
ぞっとする感覚と同時に無意識に身体が動いた
足元を貫くレーザー
機械が放った攻撃
「生きてたみたいだな」
周囲が騒然とする中、ラグナはのんきに呟いた

掘り進められ、ある程度の調査が終わった後の“塔”
ガルバディア政府からの招待に応じた訪問は僅かの時間で終了した
調査の際には動いてはいなかった
あんな仕掛けがあったなど気づかなかった
必死で言葉を連ねる彼等の姿に多少の申し訳なさを感じる
………まぁ、調査不足だって言えば言えなくもないんだろうけどな
言い訳とお詫びの言葉を笑って受け入れる
受け入れて、随行メンバーへと視線を向ける
タイミングを誤ることなく交代し、彼等へと後の事を任せる
俺からしてみればガルバディア側に落ち度がある、とは強く言えない
だが、ガルバディアからしてみれば、これは重大な落ち度だ
向こうがそう思っている以上、それをわざわざ正す必要は無い
なら、この状況を利用してこちら側の要求を飲ませる、なんて事は当たり前の手段だ
侘びは受け入れた
今なら、ある程度の提案は受け入れられるはずだ
その辺りに関しては彼等の仕事だから、適当に上手い具合にやるだろう
遠くに見える“塔”へと視線を向ける
「もう少し見てみたかったんだけどな」
零れた本音へ周りから困ったような視線が向けられる
“塔”の中を見学できたのは10分にも満たない時間
攻撃を受けたのは入り口から1つ目の部屋へと移動した後の出来事
すぐ騒ぎとなり、塔を出ることになったため、中を見学することはほとんど出来なかった
ちらっと見えた室内には特になにも無かったように見えたが、あそこはきっと重要な場所だったんだろう
攻撃されたくらいだからな
「お気持ちは分かりますが………」
濁された言葉に、ラグナは仕方ないと苦笑する
「ま、またの機会を楽しみにするさ」
あの“塔”が生きている間はそんな機会も訪れないと思うけどな
攻撃は“敵”に対してなされたものだ
認識が変わらない以上は攻撃されるだろうからな
ラグナ個人としてはそれでも構わないとは思うが、“ガルバディア”にしてみればそういうわけにはいかない
ラグナに何かがあれば、国際問題だ
ガルバディアの立場が弱くなる
俺が行くわけは行かなくなったが、上手い具合に交渉をするだろう
“過去の遺産”である“塔”の内部を確認、研究したいのは“エスタ”という国も変わらない
研究者の1人や2人送り込む位のことは出来そうだよな
申し訳なく………
と掛けられる言葉にやんわりと返事をしながら、背後の様子を伺う
これから交渉に入るだろう両国の人間が奥の部屋へと消えていった
 

 
次へ その頃のスコール