英雄と敵
(判断 SideS)


 
溢れんばかりの人の姿
“塔”の内部が公開される
その情報に好奇心旺盛な人々が村へと集まっていた
集まった人々の中を、政府関係者及び招待客が遠巻きに見つめている
塔の内部の公開はガルバディアのパフォーマンスの意味合いが大きい
そもそもまだ塔内部の調査は始まったばかり
ある程度の確認が行われ、最低限の安全が確認されたのは入り口とそこから続く僅か1室
集まった人々は当然中に入ることは出来ない
昨日までの状況を思い出し、知らずため息が零れる
“公開”の言葉のみが独り歩きした結果
当然自分達も中に入ることが出来ると勘違いした者達が引き起こした騒ぎ
“護衛”の任務に当たっているはずの自分達も借り出される結果となった
政府関係者が先導し、招待客達が塔の中へと入っていく
余計なことをしなければ良いが………
招待客として招かれたラグナの姿に不安を覚える

何らかのシステムが反応し、攻撃が行われた
人々が塔から慌しく出てくる
塔の公開は中止だろう
気遣われながら、出てきたラグナの姿が見える
何か余計な事をしたんじゃないだろうな?
今まで何の反応も示さなかったシステムが急に動き出したとすれば、何か余計なところに触れる等何かを行った可能性が高い
そして
ラグナならやりそうだ
今までも不用意に機械を動かした前科がある
“塔”の状態を知りたいと思っているのなら可能性は高い筈だ
何をしたのか聞き出せれば良いんだが………
公的な“客”としてここに居る以上ラグナと話をする事は不可能だろう
それに、ラグナが作動させた可能性を示唆する事も拙い
―――そうだという証拠があるわけでもない
塔の入り口に展開していた兵士がスコールへ道を空ける
内部の確認
危険物の排除
攻撃システムの洗い出しと安全の確認
ラグナが攻撃を受けたことによって発生した依頼内容
本来ならガルバディア兵で事足りる内容がSeeDに回ってきたのはエスタ大統領が攻撃を受けたため
先ほどの攻撃がガルバディアの策略では無いとの証拠を見せるため
「緊張するわね」
入り口の直前でキスティスが足を止める
スコールもまた武器を構える
内部に人の気配は無い
ラグナが攻撃されたのは今回唯一公開される予定だった部屋の入り口
ラグナのすぐ傍に着弾したという銃弾らしきもの
兵士達がすぐに周囲を確認したらしいがどの方向から攻撃だったのか分からなかったという
「行くぞ」
一声かけ、塔の中へと足を踏み入れる
背中を走った緊張に無意識に足が止まる
………………
何かが動いたような反応を感じた
「どうかしたの?」
「………いや」
あるかと思った攻撃は来ない
周囲の様子を探りながら慎重に足を進める
生き物の気配はしない
何者かが“見ている”感覚もない
“意思”があるのものの仕業では無い
単純な機械の仕業
ここの遺跡は確かに動いているんだろう
だが“生きて”はいない
此処にはエスタが欲しいと思うものは無いのかもしれないな
「まずはここから確認しましょうか」
入り口にある広いホール
キスティスの言葉に従い辺りを調べ始めた

 
 
次へ その頃のラグナ