英雄と敵
(疑問 SideS)
ガルバディアの塔にエスタから調査員が派遣された
偶然の事故だとはいえ、招かれた客である大統領が狙われた
お詫びとしての受け入れ
エスタが―――ラグナはこれを狙っていた訳じゃないだろうが、有意義な取引が行われたはずだ
「仕事があることは良いことだわ」
少し投げやりにキスティスが呟く
エスタからの調査員の派遣に伴い
SeeDへと発注された新たな依頼
調査員達の護衛―――そして、見張り
気づいた仕掛けは取り除いたが、まだ調査されていない区域には同様の仕掛けがあることが予想できる
そんな場所に護衛をつけずに派遣するわけには行かない
本来ならガルバディア兵を配備するんだろうが、エスタの人間を受け入れる以上、ガルバディア兵で周りを固めすぎるのも問題になる
それなら………
第三者として苦肉の策として要請されたSeeDの派遣
「やり難くそうだな」
指揮権はガルバディア兵にある
彼等の指揮下で学者達の安全を確保し、エスタの動向を探る
細やかに指定された仕事の内容
“エスタの行動を報告する”
重要事項として明記された一文
「誰を派遣しようかしら?」
キスティスがこちらへと伺うような視線を向ける
「そうだな………」
ランク分けされたSeeDの一覧が表示される
「それほど強い者が必要だとは思えない」
残された機械に気を配る必要はある
稼動する機械を排除する能力は求められる
だが、依頼内容やガルバディアの内情を思えば、最前線の仕事はガルバディア兵が請け負うはず
SeeDはエスタの学者の傍に居ることになるんだろうが
ガルバディアがわざわざエスタの人間に未調査の場所を任せるとは思えない
「………スコールは行かないのよね?」
「必要がないだろう」
戦闘になる可能性は低いのだから
「そうね」
安心したようにキスティスが答える
それに行かないほうが良いんだろう
下手に疑われるのも面倒だ
スコールはエスタの事情など知らない
エスタと積極的に係わり合いになりたいとも思ってはいない
―――他の奴らは違うようだが
理由はそれぞれだが、友人達はエスタとの結びつきを強めたいらしい
―――一部はエスタではなくらラグナとの結びつきだが
「ランクはそれほど高くなくとも良いわね」
表示されたリストが絞り込まれる
「能力は確認する必要があるけれど、最近任務を受けていない者優先ね」
キスティスの操作で更にリストが変わる
「人数は何人だ?」
SeeDに依頼される内容は少人数―――1人のみも多い―――の指定が大半を占めている
「5人ね」
………多いな
これがSeeDのみがあたる仕事なら人数は当然少ない
だが、主はガルバディア兵だ
さほど人数は必要ないはずだ
考えられるのは
「………エスタからの派遣人数は何人だ?」
「そこまでの情報は回ってきてはいないわ」
「そうか」
エスタの人間を見張るための人数
数分後、キスティスが派遣する人間を決定した
SeeDの仕事は任務に従い行動をすること
命じられた仕事はエスタの調査員の護衛と彼等の言動を報告すること
俺達SeeDは護衛という名の名目で彼等につけられた
少し離れた位置から彼等の様子を見守る
何時どこでどんなものを触ったのか
何を行ったのか
それらをガルバディア兵へと報告することも仕事
契約内容に従い彼等に付き従っているが、彼等の言動一つ一つに気を配るのは中々大変だ
攻撃があったことに対して警戒はしているんだろう
―――警戒していたの方が正しいかもしれない
だが、一度何かを始めてしまえば、警戒心を忘れてしまう
一箇所で作業に集中している場合楽に感じるが、彼等の言動を報告する仕事があるお陰で彼等が何を行っているのか確認しなければならない
………見ていても、一体その作業が何を意味しているのかが分からなく報告が難しいんだが
今も、何かを調べているが、彼等が持ち込んだ機械が何を調べているのかはさっぱり分からない
同じ室内に居るガルバディアの学者へと視線を向ける
内容はわからなくとも、せめてどの場所で機械を使用したのか詳しく報告しないとな
今日の報告を思い、重いため息を吐いた
次へ その頃のラグナ
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