英雄と敵
(報告 SideL)
「調査は順調に進んでいる、と言いたい所ですね」
“塔”からの報告はガルバディアの目もあるため数日遅れでエスタへと届く
「何か問題でもあったか?」
ま、順調に進むわけが無いけどな
今までとは違い、あそこはガルバディア主体で調査が進んでいる
アクシデントのお陰で口出し、手出しが出来るようになったとは言え、好き勝手に調査するわけには行かないだろう
「そもそも、あの“塔”がまだ生きていたこと自体が誤算だったのですが」
確かに動きが止まった時点で、ある程度は壊れたと思っていたんだがな
「発見された機械があの“塔”の基幹部分ということは無いでしょう」
入り口からすぐ近くの場所に重要な機械が設置されている
防御システムが設置されていたことを考えれば、入り口近くに重要な施設を置くなんてことは考えられない
「重要な場所じゃ無いって可能性もあるな」
そんな可能性はとても低い
単純に考えてもわざわざ埋められていた事を考えれば、何か重要な役割が有るんだろう
「問題は他の区域の調査がなかなか難しい事です」
向こうの調査員の目を盗んで他の区域へ行くことはさほど難しくはない
だが、“塔”に仕掛けられたシステムが問題
表立って発覚はしていないが、こちらが送り込んだ諜報員が数度引っかかったらしい
まぁ、その他にも正規の調査員達が不用意にシステムに引っかかっているとの話も聞いた
ガルバディア側も安全の確保に気を配ってはいるらしいが、巧妙に隠され機動条件が解らない代物に手を焼いているとの話が伝わってきている
「上手い具合にシステムを無効化して貰う必要があるんだよな」
護衛として着いている軍人達ならともかく調査をしている学者達では対応は不可能だ
安全を確保した所からの調査となる為、作業は遅々として進まない
………進めるつもりもあんま無いのかも知れないけどな
エスタからの派遣は無期限じゃない、ある一定の期日が過ぎれば契約は終了する
“エスタ”に重大な発見をされたくないなんてのは、まぁ当然の真理だろう
「可能性があるならば“彼”に動いてもらう事でしょうか」
緊張の面持ちで旅立っていった青年の姿が思い出される
「それはちっとなぁ」
どうにか出来る、と解っている訳でも無いのに危険な事をしろとは言えない
そもそも、何て言うつもりなんだ?
フィーニャに問い掛けの視線を向ける
フィーニャの視線が逸らされる
受け入れられない提案である事は解って居たらしい
「………強引に事を進めるのならばオダイン博士に向かっていただくという考えもありますが」
確かにオダインなら、多少強引に動いても諦めと共に許可されるかもしれないが
「それは無しだな」
「そうですね」
目の前に新たな資料が表示される
分析結果らしきものが表示されているが、それが何を意味しているのかは見たところで分からない
「解析完了までもうしばらく時間が必要かと思いますが―――」
資料の中に描かれた形
「“彼”が持っていたこのペンダントに仕掛けが施されていることは間違いありません」
内容の詳細らしいものが示される
専門的なことは分からないんだけどな
「こちらは、現在の調査現場における“彼”の状況データです」
グラフ化された数値が表示される
「共に派遣されている者達のデータはこちらに」
何本かの数値が表示される
細かなところを確認するまでも無い
「被害にはあっていない、か」
他の人間が幾度か攻撃を受けているが、彼は1度も攻撃にはあってはいない
運が良いだけ、慎重なだけ、余計な行動をとっていない
なんて可能性も勿論あると思うんだが
「こちら側以外のデータが揃わない以上正確な判断は出来ませんが、今後の研究結果によっては有効的な手段かと思われます」
分析結果を見れば、何かの仕掛けが施されていることは間違いない
「しばらくは様子を見るか」
「なるべく早く仕上げますのでもうしばらくお待ちください」
フィーニャの言葉と同時に資料が消えた
次へ その頃のスコール
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