英雄と敵
(状況 SideS)
「大変みたいね」
例の塔の任務にあたって居たSeeDから報告書が上がってきた
依頼主からは仕事内容には問題が無いとの判断が送られてきている
「護衛と見張りだったか?」
そこまで大変な仕事じゃないだろ
そう続けながらゼルが報告書を取り上げる
「護衛対象が彼等でなかったら簡単だったかもしれないわね」
キスティスの言葉に不思議そうに首をかしげ、報告書を読み進めている
「“学者”かぁ」
ゼルが嫌そうに顔をしかめる
学者
それも“エスタ”の学者―――もしくは科学者―――と言えばどうしてもあのオダインが思い浮かぶ
オダイン以外にも“エスタの学者”には癖のある人間が揃っている
俺達はエスタからの依頼で全員彼等との関わりがあり、一筋縄ではいかない彼等に手こずった記憶がある
「あいつら、行動が予想できないからなぁ」
大変そうだというキスティスの言葉に納得したように頷く
「ガルバディア主体だから、そこまで好き勝手に動いている訳じゃないようよ」
基本的にはガルバディアの学者達が調査をした場所のみエスタの学者が調査することができる
そういう取り決めになっている
決まりを守っているとは限らない
それをチェックするための依頼だが、ガルバディアの人間が頼めばエスタの学者も調査を終えていない区域を調べることができる
ガルバディア側の学者がどういった性質の人なのかは分からないが
………似たようなものだ
映し出されていた、どこからとも無く集まってきた学者達の姿
以前関わった学者の様子は、あまり変らない
スコールは報告書へと手を伸ばす
報告書には詳しい仕事の状況報告は書かれてはいない
「攻撃はされているな」
幾度か攻撃を受け、護衛の任務は着実に果たしていることが記されている
攻撃の割合はそれほど多くは無い
1つ1つの攻撃もそれほど危険なものは無い
「攻撃されるのも、あいつらが勝手なことをするからだって可能性はあるよな」
何気ないゼルの言葉にキスティスが納得したように頷く
「不用意にその辺を触って、何かを動かしている可能性は有るわね」
だが、その場所はガルバディア兵が調べているはずだ
1つや2つなら、見落としということも考えられるが、それほどの数を見落とすだろうか?
今は動いていない機械を彼等が動かしている
そのせいで攻撃を受けている、そんな可能性もあるのかも知れない
エスタには何が隠れているか分からない
遺跡に対しての研究はエスタにかなう所は無い
あの機械を見たことで何らかの手がかりを持っている可能性もある
そのうち何かの動きが有るかも知れないな
エスタが動くとすれば何らかの発見があった後
今はまだ
「引き続き任務に当たってもらう」
どうするのかは動きがあってから考えればよい
「問題も無いようだしそれで良いわね」
特に反対も無く、キスティスが任務の続行の処理を行った
次へ その頃のラグナ
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