英雄と敵
(観測 SideS)
報告書が届いた
大きな問題は無く順調に任務に当たっている
攻撃が行われた回数や状況
いずれも問題なく防いだという結果
ガルバディアへの日々の報告も間違いなく行われている
“塔”の調査領域は確実に拡大し、SeeD達が見張るエスタの調査員も塔内の様々な場所へと散らばっているらしい
お陰で彼等の見張りが大変になったという愚痴めいた記述が追加されてきた
「そろそろ調査にも終わりが見えてきたのか?」
すでに調査は塔の最上階らしきところまで及んでいる
「詳しい調査はまだじゃないかしら?」
確かに調査と言えば、
何を目的として“塔”が作られ、現実的にどんな機能があるのかを調べ上げる
そういうものの筈だ
そう考えれば、調査はこれからが本番だといえる
エスタはどうするんだろうか
お詫びとして行われているエスタからの調査員の受け入れ
SeeDへの派遣依頼の期間が設定されていない事を考えれば、エスタの調査員の受け入れ期間も設定されてはいないんだろう
際限無くエスタからの調査員を受け入れる?
期間が長引けばエスタへと渡す情報が多くなる
ガルバディアがそんな事を許すだろうか?
「依頼の期間はどうなっている?」
当初期間の定めが無かった
だが、新たに期間が定められた可能性はある
スコールの問いかけにキスティスが依頼書を取り出す
「期間の取り決めは無いわね」
期間が長引けば条件の追加や変更があってもおかしくは無かったが、それは無いらしい
「終了条件は?」
「エスタの調査員が引き上げるまで、ね」
情報の入手が目的とは言え、引き上げるまでの期間ガルバディアで支払いを続けるのか?
いくら警戒する必要があるとはいえ、ガルバディアが続けるだけの利点が無い
………いや、エスタの調査員が居ることで、何かの利点が生まれている、それならこの行動も納得が出来る
ガルバディアが求めているエスタの情報を知れば何かが分かるかも知れない
SeeDが行っている仕事の詳細はガーデン責任者であっても知ることは出来ない
依頼内容に問題が無いか確認するための大まかな仕事内容の報告だけを受け取っている
「さすがに期間が長いわね」
キスティスの声が耳に入る
「交代した方が良いんじゃないか?」
ゼルの提案で人員の交代が決定した
目の前に見える“塔”の姿
幾度か目にしていた通り、塔の下部は土砂で埋まっている
警備のためかあちこちに見えるガルバディア兵の姿
交代要員として連れたきたSeeDたちが物珍しげにあたりを見渡している
「今の時間なら塔の中だな」
現在任務に当たっているSeeD達は調査員と共に塔の中にいる
チャンスがあるのなら中を確認したいところだが………
まずは責任者だ
近くに居た兵士に声をかけ用件を告げる
依頼が長期に渡ったため人員を交代することは、既に連絡済だ
当然兵士達にも連絡が行っていたらしく、責任者が居るらしき場所へとスムーズに案内される
「バラムガーデンの者か?」
型に嵌ったやり取りが行われる
改めて契約内容を確認し、任務に当たるSeeDを紹介する
「現在任務についている者達ですが………」
「引継ぎのために彼等にも数日滞在してもらいたい」
言われている内容は納得できる
だが………
「勿論その期間の依頼料はきちんと倍額払う」
それなら契約上の問題は無い
だから、スコールは了承の返事をした
だが、数日の間とは言え倍額の料金を払うだけの価値があるのか?
あるとするならば、どんな内容だ?
聞けば何かがわかるかもしれない
帰還するSeeDから報告を受ける際、ある程度のことを聞くことが出来る
そのときに何か予測がつくかも知れない
塔の方向から、様々な音が聞こえてきた
次へ その頃のラグナ
|