英雄と敵
(疑問 SideS)


 
“塔”に新たな階が発見された
派遣されているSeeDから行われた連絡
発見された詳しい経緯は伝えられてはいないが、何らかの攻撃を受け、その副産物として床が破壊されたらしい
散々確認し、人の出入りがあった1階―――と思われていた―――部分
きっと何かをしたんだろう
ガルバディア側の学者達よりも高度な技術と知識を持つらしいエスタの調査員
次第に頼りにされていたという現状を考えれば、何らかの細工をすることも可能かもしれない
その場合はSeeDの仕事振りが問われることになるな
SeeDに与えられた任務は護衛と“見張り”
エスタが何かをしたとなれば、見張りの役目を果たさなかったということになる
気がついていなければ良いんだが………
「階下が発見された前後の詳しい状況は?」
スコールの問いかけに、キスティスが資料を取り出す
「ええ、すでに詳しいことは聞いているわ」
渡された資料に目を落とす
「状況を読み限り、SeeDに落ち度は無いと判断できると思うわ」
攻撃を受けたのはエスタの人間で間違いない
だが、攻撃が行われたと見える機械が設置されていた付近に彼等は近づいてはいない
また、ガルバディア兵と合同で調査した結果、機械と接続されていた配線が上階にあった装置と接続されていたこと
攻撃されたその直前、ガルバディアの学者がその機械のスイッチを押したこと
攻撃が行われた理由が記されている
「彼等に怪我が無かったことだし、SeeD側の落ち度は無いと判断されたわ」
確かに、エスタ側が何らかの細工をすることは無理な気がする
無理だと断言は出来ない
出来ないが、ガルバディア側が気づいていないのならそれで良い
ただ、気になるのは
「それで下には何があったんだ?」
エスタが目的の物を見つけ出したのか
それとも何も見つけ出せなかったのか
「そこまでは報告されていないわ」
「そうか」
確かに、その部分の情報は時期が来たら大々的に発表すべきことだろう
情報を外に漏らすとは考え難い
―――任務を終えた後なら聞くことは出来るな
任務を交代し、帰還したSeeDの報告
当然詳細を聞く訳には行かなかったが、任務内容と彼等の行動内容に合わせて聞くことでエスタ側の様子はそれなりにつかめた
彼等は危険を省みず、塔の様子を熱心に調べている
機械や装置など発見した物を隠匿する様子は見られない
それらがどんな役割を持っているのかは、ガルバディアが主体となって、共同で調べている
取得した情報を扱う際にも怪しげな動きは無かった
彼等の報告から、エスタは表立って動いてはいないことが分かる
本当に何もしていないはずは無いと思うが………
彼等にしか理解できないのなら、入手した情報の一部を隠すことも可能だろう
入手した情報は当然エスタへと送られる
エスタには、派遣された奴等よりも優秀な奴が居る
………ガルバディアも気づいてはいるんだろうな
「そのうち動きがあるだろう」
「そうね、内部の様子が解明されれば依頼も終了するわね」
情報が入手できたにしろ、出来なかったにしろエスタ側に動きがあるはず
資料の中に塔の姿が見えた
 
 
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