ジャズからハードロックまでロバート・パーマーの魅力満載

　１９９０年発売のロバート･パーマーの代表作。全１８曲中に８曲のカヴァー曲が収録され、ロバート･パーマーの音楽的なルーツを知る事のできるアルバムであり、オリジナル曲の１０曲も秀作揃いのアルバムです。ロバート･パーマーの最高傑作と評価されている名盤です。

　アルバム『リップタイド』でのブレイクから３作目になる本作では、アルバムの収録曲の約半分がカヴァー曲という遊び心のあるアルバム構成になっていますが、独自のアレンジによって、ハードロック、ソウル、レゲエ、ジャズなど幅広ジャンルの音楽を楽しめる名盤に仕上がっています。ゲストミュージシャンとしてスティーブ･スティーブンスが参加、『ユー・アー・アメイジング』でのハードロック的なアプローチでロバート･パーマーのヴォーカルは意外性があり、ロバート･パーマーの音楽に対する柔軟性に感心させられます。カヴァー曲は、ロバート･パーマーの音楽的なルーツであるマービン･ゲイ、オーティス･レディング、ビリー･ホリデイなど黒人シンガーの名曲、ボブ・ディランの名曲などが収録され、どの曲もオリジナルを超えるほど完成度が高く、知らない人が聴けばロバート･パーマーのオリジナル曲と言われても違和感は感じないと思います。１曲目から１１曲目までは、ソウル、ロック、レゲエなどのバリエーションでのロック系の曲、１２曲目以降はジャズ系の曲で構成されていて２部構成のような感じですが、曲順が自然な流れになっていてまとまりがあり、様々な音楽ジャンルの曲が収録されている割には、散漫な印象はありません。カヴァー曲が多いとはいえ、捨て曲なし、アルバム２枚分の名曲をアルバム１枚に集約した密度は、ただごとではありません。多くの評論家、ロックファンが評価するとおり、ロバート･パーマーの最高傑作と言っていいアルバムでしょう。

　 全１８曲すべてが名曲というゴージャスな名盤ですが、ロバート･パーマーのヴォーカルを支えるドラマーの才能も凄い！。様々なジャンルのアレンジで彩られたバリエーション豊かなアルバムには様々なリズムパターンが必要になり、それだけ技術とセンスが要求されます。ロバート･パーマーのアルバムのほとんどに参加しているドニー・ウィンのドラムは、あらゆる音楽ジャンルに対応し、叩きすぎずにハイセンスなアプローチで曲の土台を担い、このアルバムで重要な役割を果たしていると思います。ヴォーカリストにとっては、歌いやすい完璧な安定性と曲を決定付けてしまうグルーブ感が不可欠ですが、これだけ素晴らしいドラミングで、決してヴォーカルのジャマにならないドニー･ウィンのドラムは、ロバート･パーマーにとってベストなドラマーだったんでしょうね。私はドラムをやっていたので、特にドラマーのプレイにはシビアになってしまいますが、これだけ心地の良いドラムも珍しく、そういう意味でも特別な魅力を感じるアルバムです。

■　マーシー・マーシー・ミー　■

　マービン･ゲイの名曲『マーシー･マーシー･ミー』のカヴァー曲ですが、原曲の『マーシー･マーシー･ミー』と『アイ・ウォント・ユー』という曲をメドレーで編曲してあり、オリジナル曲とは違った魅力に仕上がっています。ロバート･パーマーも、彼が敬愛するマービン･ゲイの曲という事もあってか、思い入れが強いらしく熱のこもった熱唱を聴かせてくれます。

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芸術的な高音質

　ロバート･パーマーのヴォーカルはもちろん、バックバンドの演奏力の高さ、センスの良さも申し分の無いアルバムですが、音質の良さも際立っています。残念ながらリマスター盤は発売されていませんが、１９９０年発売のアルバムにしては音質が良く、リマスターしなくても十分な高音質です。レコーディングの音質の良さでプロのエンジニアに注目されているスティーリー･ダンのアルバムと同等のレベルだと思います。

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