ヤマハの最高傑作!レコーディング9000
世界中のドラマーに愛用されていたヤマハのYD9000シリーズ。別名レコーディング9000と呼ばれ、ドラム本体の鳴りの良さに加え、深みのあるサウンドで、ドラムの音質にこだわるジャズ、フュージョン系のドラマーに愛用者が多く、特に有名なのがスティーブ・ガッド。フュージョン系のバンド、スタッフのドラマーとしての活動していた他、サイモン&ガーファンクルのセントラルパーク・コンサートでもドラマーとして参加しています。また、近年では、エリック・クラプトンのバンドの一員として活動しているので、YD9000のサウンドを確かめたい方は、エリック・クラプトンの最新アルバムや、サイモン&ガーファンクルのDVDで確認してみてはいかがでしょうか。
1980年代の中ごろから、深胴タムが流行し、アタック感の強さだけではなく、深みのあるサウンドが流行し、多くのドラマーが深胴タムを使用していましたが、このYD9000は、標準的な胴の深さで、奥行きのある響きを聴かせてくれる名器でした。私は、YD9000をしていたので『わざわざセッティングしづらい深胴タムを使わなくても、ヤマハのYD9000を使えばいいのに・・・』というのが正直な感想でした。実際に私の参加していたバンドのライブでは、『ドラムの音が凄く良かった』『お前のドラム何で?あんなに音がいいの?』という感想が多く、まぁ、私のテクニックはともかく、ドラムの音の良さだけは、飛びぬけた評価を得ていました。一年に何十回とライブハウスに通うロックファンに褒められんですから、相当音がいいわけです。それもこのYD9000のおかげです。ドラムヘッドはREMOのピンストライプヘッドとの相性が良く、余分な倍音が全く出なかったので、タム類にミュートをした事は一度もありません。YD9000シリーズは、湿度によるドラム本体の音質の変化や、本体の歪みを防ぐ為に、胴の内側も塗装されているので、大切に扱えば一生使い続けられると思います。ハッキリと確認しているわけではありませんが、スティーブ・ガッドなどの最近のサウンドも、昔のYD−9000のサウンドのままなので、ヤマハの新シリーズではなく、今でもYD−9000を愛用している可能性が高いと思います。やはり、一度使ってしまうと、他のドラムは使えなくなってしまうようですね。
ドラマーの完成を覚醒させる世界的な名器!
正直な話、私は生まれが茨城県で、大学への進学で東京に出るまでは音楽スタジオにもロクに出入りしたことの無い田舎ものでした。東京で本格的に音楽活動をはじめてスタジオに出入りするようになってからも、特に音のいいドラムセットに出会った事もありませんでしたが、たまたま知り合いからYD−9000を安く購入した事によってドラマーとして覚醒したような気がします。ちょっと大げさに聞こえるかもしれませんが、このドラムを使うようになってから以前は苦手だったドラムのチューニングが簡単にできるようになりました。もうドラム本体がベストなチューニングを教えてくれるような感覚で、それぞれの口径のタム・フロアタム・バスドラの最高jのチューニングのピッチがすぐに音で分かってしまうんです。勿論チューニングレンジは広くて好みのチューニングにする事によって音の個性を出すことも可能ですが、そのドラムにとっての最高の鳴りのポイントが理解できるようになった事はドラマーとしての私に大きな自信を与えてくれました。今でも、音階でチューニングせずに、その口径、そのタイコに合ったベストなチューニングをしてプレイしています。やはり、どのドラムの持っている音の良さを最大限に引き出してやることもドラマーの責任だと思います。下手なチューニングをして、『お前のドラムの音は最低だ!』なんて言われたら、ドラムが可愛そうですからね。チューニングが苦手な人には是非試していただきたい名器です。まさにドラマーの音感、完成を覚醒させてくれるほど音がいいんです。
YD−9000シリーズのドラムには、一般的な10インチ、12インチ、13インチのタムの他に14インチ、15インチのタムも発売されていました。セットで販売されているドラムセットで最も多いのは12、13インチのタム、16インチのフロアタム、22インチのバスドラムという構成だと思います。オプションでハイタムの10インチを加えて3タムのセットにしている方も多いですが、14インチ、15インチというサイズのタムは、ヤマハならではの個性のあるタムで他社ではほとんど販売されていません。この2種類のタムの音色がまた独創的で魅力があります。特に15インチのタムは一般的なサイズではないので中古品でもあまり流通していませんが、スティーヴ・ガッドのファンなら一度は使ってみたいと感じている方が多いと思います。
YD−9000・14インチタム
YD−9000・15インチタム
深胴タイプタム
近年では音の鳴りを重視したDWなどの標準胴・浅胴タムが主流ですが、1980年代には深胴タムが大流行しました。エレドラも登場して悪く言えば軽薄なポップスグループが多くなった時代でしたが、その反動でパンクやヘヴィメタル系のバンドは派手なヴィジュアル、重厚なサウンドを好むようになり、音に深みがあり音圧が稼げて見た目にも派手な深胴のタムが流行してドラムメーカー各社も深胴を発売、ヤマハYD−9000シリーズにも深胴タイプが発売さました。元々音の深みがあるYD−9000を深胴にするんですから音圧に迫力がありパワーの要求されるへヴィなジャンルのドラマーには強い味方になりました。セッティングがしずらいとか音鳴りにキレのある音が出ないとかの問題はありますが、最近流行の小口径ドラムセットなどではフロアタムとして使用しても十分な音圧と上質なフロアサウンドが得られるというメリットもあります。小口径セットを使っている方で、フロアタムの迫力に満足できない方なら一度試してみる価値はあると思います。
すでに製造終了で、中古商品でのみ入手が可能です。いまだに人気の高い名器で、所有している人は、ほとんど手放さないので、入手困難になっています。このシリーズの後に発売されたヤマハのレコーディングカスタムシリーズは、シェルの鳴りを強調したサウンドに変わってしまったので、乾いたサウンドより、ディープなサウンドを好む方なら、中古品でYD9000を探してみてはいかがでしょうか。最近のドラムには無い深い味わいのあるサウンドを楽しめると思います。