相手側はまだ気がついて居ないのか、洞窟内は静まりかえっている
どうにかスコールとも合流を果たした
「人気が無いな」
ここまで人気が無いというのも想像の範囲を超えている
感づかれた訳でもなさそうなんだけどな
「……………」
ほんの一瞬こっちに視線を投げただけでスコールからの返事は無い
静かに行動しろってか？
判ってるって、それに本番はここからだろ？
辺りの岩肌が変わってきている
なめらかに削られた人工的な洞窟
そして、扉が現れた

コンクリートで作られた頑丈そうな建物
扉から一直線に続く廊下があり、左右の壁には扉が並んで居る
これは、また見事だな……
感心する気持ちと呆れる気持ちが混ざり合っている
この部分だけを見ると、ごく普通のどこかの施設の様に見える
「これだけの技術は持ってるって解釈すれば良いのかな？」
「……そうでも無いだろう」
確かに膨大な時間を掛ければ、これ位の事は特別な技術が無くても出来るだろう
とりあえず、ここが実質上の本拠地って事で間違いは無いんだろうな
当然の様にスコールが前を歩いていく
これだけ並べられた扉の向こうから生き物の気配はまったくしない
……………組織全体の数が少ないにしても、妙だな
ラグナは、一つの扉の前で足を止めた
なんの気配も感じない、それどころか……
手を伸ばし、ノブに触れる
先の方でスコールが足を止め振り返った
無造作に扉を開いた
…………はずだった
扉は、引いても押しても動かない
「偽物みたいだな」
見せかけだけの開かない扉
きっと将来ここを訪れる事になる誰かの為に準備されたモノだろう
上辺だけの代物か……
「こっちも同じだ」
虚勢と虚飾、体裁だけが整えられている
……セントラの民、か………
きっと、彼女達はこの言葉も同じように使っているんだろうな
「……行くか」
対面する時の事を思い、憂鬱な気分を抱えながら、建物の奧へと進んだ