英雄と夢想家
(突入 αSide)
じっと見つめていた時計の針が予定の時間を指し示した
「よし、行くぞ」
気合いを声に出し、洞窟内に飛び出していく
…………なんでスコールがいるんだよ?
待機していた位置の問題なのか、後から突入で良いの筈のスコールが先頭を走っていって、見張りをなぎ倒している
空間に余裕があったのは、入り口付近のわずかなスペースだけで、先の方は狭い通路が続いている
「スコールまで先に行ってどーするんだよ?」
背後で力の抜けたラグナのつぶやきが聞こえる
「………勢いかなぁ」
慌てて後を追う俺の隣を走りながら、アーヴァインが困ったように呟く
どっちにしろこの狭い場所じゃあ、場所を入れ替える訳にも行かない
「……スコールが全部倒しちまって、後は何も残ってないかもな」
……そしたら、それはそれで良いけどよ……
サイファー、一緒じゃなくって良かったよな
……こういう事も考慮して、配置分けした訳じゃないよな?
通路を急ぎながらゼルはしみじみと考えていた
「………多いね」
ようやく見つかった通路の分岐点でスコールと別れ
ゼルとアーヴァインは、住居部分と思われる道を奧へと進んでいた
「こっちに全員集まってるんじゃないよな?」
通路の先から感じる人の気配
静かなざわめきと微かに動く空気の振動
「集会とか開いてたりして……」
大勢いると判る人の気配は、広間になっているらしい通路の先から動く様子が無い
「……の場合ってのは、ラグナとスコールが無駄足を踏むんたよな?」
集会をしているなら主要人物はこっちに居るはずだしな
「そうだね、でも仕方ないよね」
通路の影に身を潜めアーヴァインが銃を構える
戦闘能力の有る人間が少ないってっても予想だしな
これだけの人数を相手にするってのは、やっぱり遠くからの援護が無いと無理だよな
「頼んだぜ」
「まかせておいてよ」
笑顔を浮かべたアーヴァインに合図を送り、ゼルは拳を握り広間へと足を進める
ぽっかりと口を開いた大きな自然の広間
中央に集められたごく普通の人々の姿
「どうなってるんだ?」
そして、その周りを取り囲む武器を持った少数の人々
「どうなってるって聞かれても……」
他の奴らが先に到着したって感じでも無いよな?
持ち場を離れ単独行動に出そうな人間に心当たりはある
「……サイファー居ないよな?」
「居ないみたいだよ」
二人の間に奇妙な沈黙が訪れる
「少し、様子見ようか?」
「そうだなっ」
アーヴァインの言葉で、ゼルは物陰へ身を潜め耳を澄ませた
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