英雄と夢想家
(兵器 SideS)


 
目の前に広がる巨大な空間
そして、その大部分を埋める程の巨大な兵器
先ほど映像で見たモノとまったく同じモノが其処にあった
稼動している機械の音が、辺りに大音響で鳴り響いている
不気味な振動
点滅を繰り返す緑と赤の光
……何をするつもりだ?
先ほどの映像は1週間の猶予を語っていた
だがこの兵器にしか見えない巨大な機械は、今現在稼働している
今すぐどこかへと攻撃を仕掛けようとしている
スコールは、物陰に身を潜めながら機械の側へと近づいていく
考えられるのは見せしめの為の攻撃
とすると……
狙いはエスタか?
宣告も無しに攻撃仕掛けた対象はエスタとバラムガーデンの2つ
一度行った事をもう一度行う可能性は高い
そして、バラムガーデンは今現在常に移動しており、狙いを定める事は困難だろう
そうなれば残るのは必然的にエスタただ一つ
きっと、攻撃に備えた防御策は準備されている
……どちらにしろ、目的は兵器の破壊だ
スコールは気づかれぬ様そっと、機械へと近づいた

機械を操作する複数の人間の姿
無表情に無言で次々と機械が操作されていく
操作に費やされる時間が普通では考えられないほど長い
……こんなに時間がかかるモノなのか?
スコールがそう疑問に思うのとほぼ同時に、1人の男が機械を操作する手を止めた
「……これで、全世界の主要箇所の登録は完了しました」
轟音を立てる機械の音にかき消されそうな声
どこか不安そうな表情
全世界?一週間後の準備……とは思えないな
スコールは、物陰を機械のすぐ側の彼等の死角へと移動する
「よし、後はもう良いぞ」
1人機械から離れた位置に立った男が告げる
「こんな設定、どうなさるんです?」
女性の手が、中央にある赤く光るボタンを押した
機械音がほんの少し小さくなった
「なに、もしもの場合に備えて、手間を減らしただけの事だ」
どうせ返事を待っている間はやることもない
もっともらしく聞こえる男の言葉
だがその声と口調には、強烈な違和感を感じる
「……ですが、誰かが不用意に触りでもしたら危険なのでは?」
不安げに視線を交わし、その内の1人が恐る恐る問いかける
「その危険防止の為に、その安全装置があるんじゃないか」
安心させようとでも言うのか、大げさな笑みを湛えて男が言う
静かなざわめきに、男が不快気な顔をする
「……確かに、その通りですね」
絞り出されるようにこぼれた言葉
「長い時間ご苦労様、疲れただろう?ここは私が見ているから、君達は休んでくると良い」
有無を言わさない高圧的な言葉が掛けられる
機械を気に掛けながら、立ち去っていく人々の姿
……何をするつもりだ?
半ば答えの予測できる疑問を抱えながら、スコールは男の様子を観察していた
 
 

 
 
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