英雄と夢想家
(破壊 SideS)


 
男が伸ばした手を掴み、機械の側から引きはがす
引きはがされた勢いそのままに、男が背後の壁にぶつかる
機械を操作していた人々の姿が消えて、わずか数分
男は彼等の不安通り、スコールの予測通りの行動を躊躇う事無く行おうとした
安全装置の解除
不気味な笑みを浮かべてボタンに手を伸ばした男の姿に、スコールは何かを考える余裕も無く飛び出していた
攻撃を仕掛けるつもりだった事は明白
「……貴様っ!」
地面に転がったまま、怒鳴り声をあげる男の目が見開かれる
「お前は、誰だ?」
声に震えが交じっている
「いったいどこから入ってきた?」
重ねられる質問に答える義務は無い
スコールは、安全装置を確認し、まだ作動音を奏でたままの機械へ視線を向ける
背後から聞こえるわざとらしいうめき声、そして身を起こす気配
油断を誘い、その隙に……というつもりなのだろう
空気が動いた瞬間にスコールは、ガンブレードをなぎ払う
重い手応え
くぐもった悲鳴が上がり、男の身体が弛緩して倒れる
……瞬間に男の手が何かを握り締めた
どこからか冷たい空気が流れ込んで来る
…どこだ!?
周囲を見渡したスコールの右手の壁がスライドする
なめらかに音も立てずに開かれる石壁
壁の中から古びた兵器が姿を現した

打ち出される光線を避ける
外観に似合わず、攻撃は鋭く
その威力も見慣れた科学兵器とは格が違う
光に貫かれた岩壁が一瞬にしてその大部分を消失する
セントラ製だな
きっとどこかの遺跡から発掘したモノだろう
倒れ伏した男へとわずかに視線を向ける
簡単に気絶した男は、目覚める様子も無い
握り締めた男の手の隙間に見える金属の輝き
兵器の新たな攻撃を避け、左手が冷たい金属へと触れる
すぐ背後に各地を狙う巨大な兵器
稼働音が耳に響く
太古の兵器の銃口がスコールへと狙いを定める
………利用できるか?
スコールの視線の先にあるのは、熔けた岩壁
銃口に赤く光が灯る
次第に強く輝く光
眩しさににスコールは目を逸らし、神経を集中させる
研ぎ澄まされた神経が感じた、異質な音
反射的に身体が動く
スコールが避けると同時に放たれた光線
それよりもわずかに早く身体を包んだ覚えのある感触
『無茶をする』
笑いを含んだ声が聞こえ
音と共に、機械が爆発した

 
 
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