英雄と夢想家
(拘束 αSide)


 
「何をしに来た!?」
倒された仲間を心配する様子も無く、冷たい目がこちらを見ている
「こんな所まで、お前達は何をしに来た?」
こちらを見据えながら、じりじりと退いていく
“カチャリ”
手に持った武器を構える気配を感じる
何気なさを装いながら、ちらちらと後方に流れる視線
俺の左後方
アーヴァインから確認出来る位置だ
「答えろ!」
俺は当然の様に彼女の質問になんか答えるつもりなんか無く、一歩足を踏み出す
すぐに足が踏み出せる様に、微妙に移し替える重心
いらだった様な視線が俺と俺の背後に向けられる
気配が動く
目の前の女の顔が微妙に変わる
今だ!
地を蹴り、攻撃を仕掛ける
それとほぼ同時に響いた銃声
手足に感じた軽い感触
防御も、受け身も取らずに吹き飛んでいく身体
軽い音を立て、女が壁に激突した
そして、背後で何かを落とした金属音とくぐもったうめき声が聞こえる
一定の間隔を置いて鳴り響く銃声
ゼルは軽々と吹き飛んだ女性の身体に驚きながらもすぐさま身を翻す
慌てて武器を構える姿
ゼルとアーヴァインの手によって次々と倒される仲間の姿に、逃げ出そうと背を向ける様子
彼等は1人も逃れる事は出来ず、倒され
そして、残された最後の数人が戦う事を放棄した

たいした相手じゃなかった
倒れている彼女達を拘束して、二人一緒に抱いた感想
構えていた武器も役には立たなかったし、彼女達の格好も見かけ倒しだった
彼等が所持していた物品を取り上げ洞窟の隅へとひとまとめに置く
「……それでこれからどうしようか?」
広間の中央付近に転がされた彼女達
そして、扉の向う側に拘束されている彼等
「2人じゃ無理だよな」
これだけの人数は、拘束していると言っても全員連行するのは無理だ
「どう考えても無理だと思うよ」
全員で体当たりでもされたら流石に数人は取りこぼしてしまう
……まぁ逃げられたとしても、出入り口は固められてるからどうしようもないけどな
「……呼ぶか」
通信機を使うのは、最後の最後でって言われたけれど
2人じゃ手が回らないんじゃ仕方無いよな
「…………そうだね」
それに、ここに居るのが全員って訳じゃないけどほぼ全員だもんな
「そろそろ向こうも決着が付く頃かもしれないしね」
ゼルが通信機を取り出し、スイッチを入れるとほぼ同時に、洞窟内に爆音が響いた
 
 

 
 
次へ ラグナサイドへ スコールサイドへ