日本オーディオ史の金字塔!
NECのA-10は、オーディオファンにとっては伝説的なプリメインアンプとして絶大な支持を得ています。シリーズ化されてTYPEWまで作られましたが、この初代機とTYPEU以降では、完全に音質、物量が変わっています。発売当時、作れば作るほど赤字が大きくなってしまう為、すぐに製造が中止になり、生産台数200台あまりと極端に少ない為、今では幻のアンプとしてオーディオファンの憧れの的となっています。極めて個性的で、日本のオーディオ史の中でも最も魅力のあるアンプだと思います。もし、今同じグレードで発売されれば、30万以下では作れないと思います。
一般的に言われているようにジャズ、ロック向きの音質だと思います。何と言っても楽器、ヴォーカルの音のリアリティが違います。音質の最も重要な要素である電源を、リザーブ電源という方式で電源供給能力を大幅に増大させたことにより、個々の楽器の音質が限りなく生の音に近い音で再現されるようになっています。あまりにもリアルな音質なので、ソフトに仕上げられた音に慣れている方にとってはショッキングな音だと思います。リアルな音を求める方にとっては、一度使うと手放せなくなる一生モノのアンプになるのではないでしょうか。
以前バンド活動をしている時に、バンドの練習を見学させて欲しいと頼まれる事がよくありました。熱心に頼まれたときだけ仕方なくスタジオ練習の見学をOKしたのですが、実際にスタジオで練習している音圧にさらされると、みんな30分位が限界で、すぐにスタジオの外に出てしまいます。ライブ会場での演奏ならプレイヤーや楽器との距離があり、絶えられないほどの音圧を感じることもありませんが、スタジオ中だと、アンプや生のヴォーカル、ドラムの音を1メートルから2メートルという至近距離で聴くことになり、かなりの音圧にさらされるので、普通の人は耐えられない状況だと思います。大きなアンプから大音量で出てくる突き刺すようなギターの音、足元から振動として伝わってくるベース音、ドラム、シンバルの腹に響く生音・・・などなど。胃袋がねじれる様な生々しい音圧にさらされるんですから、ステレオやライブで音楽を聴く状況とは全く違います。A−10の音はギラギラした音とか、ダイナミックな音と評される事が多いようですが、実際にスタジオで演奏されているヒステリックなほど生の音に近い音質なので、ギラギラしているように感じられるのかもしれません。
アーティストがレコーディングスタジオで出している音を、リアルにバランス良く聴けるプリメインアンプだと思います。楽器の音が痩せたり、ゆるくなったりしていないので、ドラムセット、ギターアンプ、ベースアンプ、ヴォーカルアンプなどが目の前にセッティングされていて、それぞれの生音を直接聴いているような感覚で音楽を楽しめます。音場のスケール感、奥行きはA−10Wなどの方が上だと思いますが、個々の楽器のリアルな音像は、比較になりません。A−10U以降の機種と、このA−10では全く別と考えていいと思います。AVアンプではないので5.1chでは使えませんが、DVDを再生しても音楽は勿論、映画の効果音も生々しい音質で楽しめます。また映画鑑賞時に、BGMの聴こえ方が別次元で高音質になるので、今までとは違った映画の楽しみ方ができると思います。
パワーアンプのような設計で音にパワーとリアリティがあるので安物のCDプレイヤーで鳴らしても十分にリアルな音を楽しめますが、DENONのS−10シリーズや、NECのCD−10、フィリップスのLHH−500など低音にパワーのあるCDプレイヤーを使用すると、楽器の音像がより鮮明にパワフルに伝わってきます。また、パワーのあるアンプなので、どうせなら大きめのスピーカーでガンガン鳴らしてあげれば最高だと思います。アナログ部もMM、MCが搭載されているので、まだまだアナログ盤を楽しみたい方にとっても頼りになる機種ではないでしょうか。
極端にリアルで生々しい音質なので、やわらかい音質、優しい音が好きな方には向かないと思います。幻の名機と呼ばれ、今でも人気の衰えない機種なので、中古品で7万円から12万円ほどが相場のようです。生産台数が極端に少ないので中々見つからないかもしれませんが、中古で10万円という価格でもお得な名機なので、もし見つけたら見逃さないようにした方がいいと思います。
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