霊厳夜話
 
 

第17話 鷹狩り先へ女中方お供の事
    1、問 權現様が御在世の内、鷹狩りの先には、女中方を、お供に連れたというのは
      確かな事であろうか。

    1、答 筆者が若年の頃、小木曽太兵衛が物語るには、浜松・駿府に居られた時は、
         常に、鷹狩りの先へは、その様では無かった。
         遠方に、お泊まりで、鷹狩りされる時は、女中衆を六・七人位い、決まって
         お供をされた。
         その内、乗物でお供をした女中が一・二人で、その他は何れも乗掛け馬((注釈))で、
         (あかね)(ぞめ)の木綿布団を敷き、市女笠((注釈))の下に、覆面をして、お供をした
         今度(このたび)は、女中方がお供をする時は、決まって、滞在する事も有った。
         関東御入国以後は、お忍びで川越・東金辺りへ鷹狩りに入られて、何日も
         滞在された。
         急に伺かわなければ無らない御用も、老中方を初め、諸役人中達が、その
         先々へ、参上した様な事も有った。
         その様な、長い滞在の時は、女中方も多くお供に連れていった。
         台徳院様も、權現様が御在世の内は、時々、泊り掛けで鹿狩り・鷹狩りを
         されたけれど、その後は止めた。
         大猷院(だいゆういん)様の代にも、鹿狩り・鷹狩りを度々されたけれど、泊り掛けというの
         は無かったので、女中方が、お供する事も無かった。
         以前は、御三家方を初め、仙台中納言殿・薩摩中納言殿も、年取った女中の
         台所に入ってぶらついていた。
         筆者が若年の頃、松平安芸守殿で、鷹狩りの鶴を拝領し、その開いたのを
         振る舞われた。
         小松中納言殿も、台所に居て、書斉へ行かれた時、年取った女中二人の内、
         一人が刀を持って、中納言のお供をし付添って出たのを、筆者が見た。
         この様な事は七十七年も前なので、この方はどなたか覚へていない。
  (注釈)
     乗掛け(のりかけ)(うま)  一人が乗り、荷物を積んだ駄馬。
     市女笠(いちめがさ)   市で商う女が用いた笠。

第3巻17話