一生使いたくなる!
1986年発売当時定価\150000円。ビクターが、デジタルオーディオの究極を目指すリファレンス機として発表したCDプレイヤーの傑作。やっぱりCDプレイヤーはビクター!というオーディオファンの期待を満足させる名機です。
まず、本体は、アナログ・オーディオ部が完全に独立したD/A2ボックス設計を採用した内部構造。オーディオ部はデジタル・サーボ系や電源部から独立させるため、厚肉の非磁性シャーシを用いたシールドボックスに単独で収納され、オーディオ部以外のシャーシにも全てアルミ押し出し材と銅メッキ鋼板を組み合わせた非磁性構造で、本体の材質、レイアウトが工夫されている事によって磁気歪を追放しています。さらに、制振素材を用いたメカベースの上に大型インシュレーターでディスク・ドライブと光学ピックアップをフローティング・マウントしたISメカニズムによって、外乱振動や音圧による歪みを排除、つまり本体シャーシの材質やレイアウトピックアップのマウント方式に徹底した防振対策がされていることにより、歪み感のほとんど無い理想的なドライブ環境が整えられているわけです。パルスノイズの少ない高速ダイオードやオーディオ専用広帯域ローノイズ電解コンデンサーなど、メカのパーツも厳選された高品質パーツが採用され、電流伝送方式を採用したD/A変換部には、左右チャンネル独立のD/Aコンバーターを採用。ピックアップ部には新開発のハイ・プレシジョン3ビーム・ピックアップを採用したことにより、情報量も増し読み取り精度も飛躍的に向上しています。本体電源部は、サーボ系、デジタル系、オーディオ系を独立させた3電源構成を採用、それぞれのブロック間の干渉を排除する事によって理想的な電源供給を実現しています。
ビクターのCDプレイヤーの名機XL−Z711のピュアな音質に感動していたので、他にもビクターの名機を見逃しているのでは?と不安になり、苦労して入手したのが、このCDプレイヤーでした。なかなか見つからなくて、見つけるまでに2年以上かかりましたが、XL−Z711よりも硬質で私の好みに合う名機で、苦労した甲斐がありました。音質は文句無しです。ピックアップのマウント方式、本体シャーシ、レイアウトの防振対策により歪み感はほとんどなく、3電源構成によりピュアな電源が得られている事によりエネルギー感もあり、何より3ビーム・ピックアップによる解像度の高さによって情報量が多く、読み取り精度が高いためか、1980年代の機種にしては、CD−Rなどの読み取りもスムーズ、今のところCD−Rでエラーは全く出ていません。音質の傾向としては、弦楽器の弦の響きを忠実に再現してくれる硬質な音質で、ムリに音を膨らませて音の豊かさを感じさせようとする素人好みの音質ではなく、弦の太さ種類まで分るような原音の音の質感をリアルに伝えくれるタイプで、ピアノ、ギター、ストリングスなどの音のリアリティは感動的です。音の芯が崩れない音質なので、打楽器の打面にスティックが当たる時のアタック感、木製か金属性かがハッキリ分る音の響きも快感で、ヴォーカルも歌い手の声質を忠実に伝えてくれるので、ヴォーカルの声質の個性を満喫できますし、歪み感が無くヴォーカルも声の輪郭がハッキリ聴こえるのでコーラスワークの分離が良く厚みのあるコーラスも、それぞれのパートの声がハッキリと聴き取れます。ウエストコーストサウンドなど美しいコーラスワークを楽しめる音楽にも最高です。徹底した防振、歪み対策によって解像度、情報量をアップさせているので、解像度重視で聴こえなくてもいい音まで前に出てくるようなことも無いので、音楽的なバランスも秀逸。個人的には、ユニバーサルプレイヤーを持っていても、あえてCD再生の専用機として一生使いたい!という満足感を与えてくれる名機でした。XL−Z711のK2インターフェイスは、中高域に独特の響きの良さがあるので、ちょっと悩みますが、個人的な好みから言うと、やはりこの機種を選ぶと思います。解像度や音のリアリティは文句無しですが、どちらかと言うと硬質な音質なので、柔らかめの音質、楽器の音が溶け合うようなふんわりとした音質が好みの方には、音が生々しすぎて聴き疲れするかもしれません。また、このCDプレイヤーには光出力が付いていません。音質の精度を極限まで高める為に光出力が省略されたようですが、光出力とアナログ出力の音質の違いを楽しみたい方には不満かもしれません。
ステレオサウンド誌の88年コンポーネント・オブザ・イヤーを受賞したXL−Z711は、知名度、人気も高かった為に販売数が多く、中古品でも比較的入手し易いですが、XL−V1100は、定価が15万で、ちょっと高額だった事もあり中古品で見つけるのが難しく、なかなか見つからないと思います。音のリアリティ、質感、パワーなどはXL−Z711に勝ると思いますが、レアな機種なので、のんびりと気長に探すしかないでしょう。私はオークションで3万円ほどで入手できましたが、4万ぐらい出しても損はしないでしょう。