NECの名機A−10のCDプレイヤーバージョン!
1989年発売当時定価99800円、NECの新リファレンスとして発表されたCDプレイヤーで、定価10万円前後という激戦区の価格帯に投入された意欲作です。シンプルなデザインが、音の力強さと、音に対する妥協の無い姿勢を象徴しているようです。
D/A変換回路には、直線性の良さで選ばれたDACの中から、さらに小レベル時の精度で特別に選んだD/Aコンバーターを左右それぞれ2個使用したバランス型返還回路の4DAC
B.S.S(Balanced Summing System)を搭載、電源部には、極太のDFC ACFコードを採用し、A/D完全独立2トランスを搭載しています。さらに各ステージごと2次側の巻線を分割する独立給電方式を採用し、電源部でのアナログ系とデジタル系の相互干渉を防止しています。また、電解コンデンサーには、動的なダイナミズムを追及した結果、全てに余裕ある高耐圧品を使用し、さらに電源ラインの要所にはパターン配線に頼らず断面積が大きく、皮膜の厚い線材で配線し、より高品質化を図っています。シャーシ構造には、デジタルノイズの混入を防ぐため、A/D完全分離2BOXシャーシを採用。振動と音の関連に着目し、ダイレクトメカニカルグラウンドコンストラクションを採用。
バランス出力端子を搭載しており、アンバランス出力端子には正相、逆相それぞれの出力端子を搭載しています。
NECの伝説のプリメインアンプA−10にすっかり魅了されてしまい、迷わず購入しましたが、このCDプレイヤーも凄い名機でした。電源部や振動対策は勿論、左右それぞれに独立したDACを搭載するなど、当時のNECのオーディオに対する並々ならぬ意欲が伝わってくる名機だと思います。電源を強化したことにより、音質を限りなく原音に近いパワーで再生出来る事と、独立DACによって左右バランスのふらつきが一切なくなっているので、レコーディングされた音源の力、原音のリアリティを最大限に高めていると思います。まさに、A−10のCDプレイヤーバージョンと言える力作です。
私の知り合いのオーディオファンでピンク・フロイドのギターの音を限りなく原音に近づける事をテーマに、オーディオを追及している方がいますが、その方は、とにかくデイブ・ギルモアのギターアンプが目の前で鳴っている感覚を求めて音を追求しています。もはや独自のイメージを追求する世界ですが、原音の持つパワーを出来るだけロスせずに鳴らすというテーマで音楽を聴くなら、このCDプレイヤーは最適だと言えるかもしれません。ピンク・フロイドに限らず、ギターサウンドや、ベース、ピアノ、ドラムのリアルな音質を追及する方には見逃せないと思います。また、今でも人気の衰えないフィリップスのLHH-500などの名機に比べても、バイオリン、チェロなどの弦楽器の生々しさは互角か、それ以上だと思います。幻の名機と言われるNEC A−10のサウンドが好みの方は、A−10シリーズとセットで使うと、よりリアルでパワフルなサウンドが楽しめます。
A−10も採算割れして赤字だったようですが、今なら30万クラスのCDプレイヤーの性能だと思います。中古市場でも、あまり見かけませんが、持っている人が手放せないからでしょう。発売当時の定価が安かったので、オーディオショップの中古品やオークションで探せば5万円以下で購入できると思います。
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