総合的には、A−10より上!
オーディオファンに大きな衝撃を与えたNECの初代A−10の後継機。1984年ごろの発売当時、定価109800円。初代A−10の衝撃があまりにも大きかった事もあり、2代目となるA−10Uは過小評価されていますが、オーディオファンに、いまだに絶大な人気のある故長岡鉄男先生も、総合的には本機の方が上回っていると評していた名機です。
初代A−10から、様々な改良点がありますが、特に特徴的なのは、構造強度の改善で、本体のボンネット部の重量は2120グラム、その下にもスチール補強版があり、底板は、前代未聞の3.5ミリ厚鉄板、インシュレーターは1個250グラムの焼結合金という極めて硬く、重く、しかも鳴りにくい材質を使用、フロントパネルのツマミ類も、同様の材質が使用されていました。電源部はNEC独自のリザーブU電源で、2組の整流回路があり、一組はメイン電源として使用され、もう一組の整流回路をリザーブ電源として、こちらに貯まっている電力を、メイン電源の隙間に合わせて送り込むようになっています。これによってバッテリードライブに近い安定した電源を使用した安定感のある、定位のしっかりした音像が実現しています。アナログ部は、MC入力のみになり、ハイゲインイコライザー、感度250μVと低めですが、音質面では有利で、アナログファンにはうれしい限りです。
初代A−10のような、狭いスタジオの中で、生演奏を聴いているようなエネルギー感はありませんが、初代A−10が6畳ほどのスタジオ内でミュージシャンの演奏を聴いているようなリアルな音質を体感できるとすると、A−10Uは、ライブハウスの中央付近で全体的な音の広がり、奥行きまで体感できるといった印象です。また、硬質でエッジの強い音質から、潤いや艶のある音質へと進化しています。故長岡鉄男先生も、総合的には本機の方が上と、評していますが、リスナーとして音楽を聴くなら特等席で、個々の楽器のリアリズムより、音楽全体を、適度な潤いと艶のある音質で楽しむという観点から評しているのかもしれません。とにかく音を、すぐ近くで聴きたい、ギターアンプやPAアンプの真ん前で聴きたいという方はA−10、全体的にバランスのいい状態で音楽全体の空間、音場も楽しみたいという方はA−10Uが向いていると思います。
絵画の鑑賞などでも、あまりにも近くで観るよりは、ある程度、距離を置いて鑑賞した方が鑑賞しやすいという事もあります。以前、映画の試写会に行ったことがあるのですが、入場の時間がギリギリだった為、最前列の席しか空席がなく、最前列で鑑賞しました。大画面が、すぐ目の前、高音質サラウンドの効果もあり、大迫力で鑑賞したのですが、あまりにも画面が近すぎて、画面全体を観るのに苦労して、とても疲れて帰ってきたのを覚えています。音楽鑑賞でも、音があまりにも近すぎて生々しいと、『木を見て森を見ず』ということにもなりかねません。好みにもよりますが、聴き疲れせず、音楽全体を、楽しむという点では、A−10Uの方が優秀かもしれません。
初代A−10が、中古品で7万円から12万円ほどと高額なのに比べると、A−10Uは2万円から4万円ほどの価格が相場なので、かなり安く入手が可能です。A−10ほどのエネルギー感は無いと言っても、安定した電源から得られる楽器の輪郭は、かなり太く潤いがあり、さらに立体感のある音場を楽しめるのですから、A−10シリーズの中でも相場としては一番安く、一番お買い得なアンプかもしれません。リザーブU電源は、ウォームアップの効果がハッキリと出るので、電源を入れたばかりで使用するときと、電源を入れて1時間以上経ってからでは、まったく音が違います。これは、リザーブU電源を採用したNEC A−7、A−700なども同じですが、焦らず、電源を入れてから1時間ほど待って使用した方が、アンプの性能を十分に楽しめます。
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