実は一番お買い得プリメインアンプ!
1986年発売当時定価79800円。オーディオ全盛期ならではの名機です。この頃はオーディオメーカー各社が10万円以下の価格帯で最も競争が激しくサンスイの607シリーズや、ソニーのF333シリーズなど各社名機を世に送り出していた時代で、フラッグシップモデルの高音質設計をこのクラスに投入した機種が多く、10万円以下とは思えないような名機がズラリでした。ビクターのアンプは、この後に発売されるAX−Z911やAX−Z921などの知名度が高いですが、この機種も驚くほど充実した低音、音の分離の良さ、立体感のある空間表現力とどれを取っても満足できる優秀なプリメインアンプでした。一般的に知名度が高く人気のあるAX−Z911などに比べると古く知名度も低いので中古商品の値段が格安で、コストパフォーマンスが最高の中古プリメインアンプです。一番お買い得かもしれません。
このアンプの上位機種AX−1100というフラッグシップモデルが当時定価15万円。このAX−1100の技術とサウンドコンセプトが投入されて10万円以上の機種にも劣らないハイグレードな音質になっています。音質の劣化につながるノイズや振動を極力排除してクリーンな音源をスピーカーに伝達する事を基本コンセプトとして、プリアンプ部、コントロール部、パワーアンプ部、電源部を独立配置した4ブロックコンストラクションを採用して、それぞれのユニットごとにノイズや振動対策をしています。デジタル対応P.S.R.サーキットによって入力部の外来ノイズを、H.S.コンストラクションによって機会振動を、C&Dパワーサプライによって電源からのノイズを、それぞれカットしてピュアな音を実現、更に低インピーダンス負荷に強いH.D.Gmサーキット、デジタルの高S/Nが活きるGmボリュームとGmセレクターが採用されています。主要メカを4ブロックに分割してそれぞれ音質に悪影響を与える要素を排除、このアンプ独特のGmセレクターも使い方によっては効果的です。このGmセレクタはメインボリュームのツマミの奥に0db、-6db、-12dbの3段階に変更できるセレクタのツマミがあり右に回すと音のレベルが上がる感じです。私のように小心者でボリュームの矢印が9時以上になると苦情がくるんじゃないかとビクビクするような人は、最高の0dbにしてメインボリュームを大きく回さなくても大きな音で聴けるようにセット。リスニング環境に恵まれていて音量を気にしなくてもいい人は、最小の-12dbにセットしておくとか環境によって使い分けができて便利です。勿論Gmセレクタのポジションを変更しても歪やノイズはありません。ただし、Gmセレクタもボリュームパーツのようなものなので長時間使用していないとガリが発生してしまうので注意が必要です。
このアンプの音質も基本的にはAX−Z911などと同じで、原音の力を失わずに忠実に再現するタイプで、変な色づけがされていないのでスピーカーやプレイヤーで好みのサウンドメイクが可能です。十分過ぎるほどの電源部によって原音に近いパワフルな音が再現できますが、その分消費電力が大きく、かなり熱が出ますので、くれぐれもアンプの上にプレイヤーなどはおかないようにしましょう。このアンプの基本コンセプトである徹底したノイズの除去によって何が得られるかというと、勿論ピュアな音質なんですが、余分なノイズや歪みがなくなることによって空間表現力が際立ちます。レコーディングされた音の立体的な配置が音像を造りだし、滑らかな曲線のように出てくる音や鋭利な刃物のようにスピーディーな音の立ち上がりで向かって来る音像など、音楽が様々な楽器によって創られた生き物のようにスピーカーから躍動感を持って再生されてきます。NECのA−10までには及ばないかもしれませんが、ピュアな音質による音の立体感、生命力の強さは圧巻です。そして何よりもコストパフォーマンスの良さが魅力です。AX−Z911などは中古でも1万円前後、このアンプのような音のリアリティと立体感などを求めてA−10Wなどを購入するならオークションでも3万以上になってしまいます。このアンプならオークションで5000円前後から入手が可能です。最もお買い得な名機だと思います。
経済的な事情も色々とありまして、やはりオーディオにお金を使えない事もあるわけですが、一度ある程度の音質に慣れてしまうと、グレードダウンするのはオーディオファンとして精神的にツライのです。苦肉の策で試したこのアンプが大当たりで、近年メインで使用しています。安いので買い替えもしやすく、念のためにバックアップで1台購入して現在3台持っています。私もそろそろ寿命が尽きてきたようなので、もしかしたら、このアンプを死ぬまで使う事になるかもしれません。