霊厳夜話
 
 

第58話 朝鮮人参の事
  1、問 朝鮮人参((注釈))は、以前も今の通り工面(くめん)しても、品不足で値段も高値であったので
      あろうか。
  1、答 筆者が若年の時は、人参が入用であれば、如何程も調へられ自由であった。
         値段も人参一両匁((注釈))に付き、白銀十二・三匁程で買えた。
      その時は、人参を用いるのを好み、医者の薬を人々は、不安がっていた様
         であった。
      病家で、人参の入った薬を用いていると聞けば
      「何んという笑止((注釈))な事であろう。」と言って悔む((注釈))様であったので、筆者も
      確かに覚へている。
  (注釈)
     朝鮮人参(ちょうせんにんじん)    ウコギ科の多年草。単に人参、又は高麗(こうらい)人参ともいい、
              薬用植物として著名。
    一両(もんめ)      (かん)の千分の一。
    白銀        銀(白金の意)。
    笑止(しょうし)        気の毒なこと
    悔(くや)        人の死をいたみ悲しむ。

第10巻58話