数学者のマックス・コーエンは、類稀な数学の才能があり、世の中のすべての物事は、全て数学的な法則性を持つと考えて、研究を続けていた。その法則を見つければ、株式市場の相場予想にも応用できる為、マックスの知識を金儲けに利用しようとする人間や、ユダヤ教のカバラ主義の謎を解くために数式を探すユダヤ教徒などが、彼に近づいてきた。ある日、２１６桁の数字をコンピュータがはじき出し、マックスは恩師であるソルに相談するのだが・・・。

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　１９９８年アメリカ作品。監督は『ファウンテン・永遠につづく愛』などのダーレン･アロノフスキー、出演はショーン・ガレット、マーク・マーゴリスなど。世の中の全ての事象の基礎となる法則、数式を見つけようとする科学者と、彼を利用しようとする人間たちを描いたミステリアスなサスペンス映画。

　モノクロ作品ですし、エンターテイメント性も低い作品ですが、知的好奇心を刺激してくれる名作として特異な作品です。主人公は天才的な数学者で、世の中の全ての事象は数式で表現できると信じています。そして、究極の法則を発見すれば、株式市場の変動を予想可能と考えて研究を続けるのですが、同じように、彼の研究を投機に利用して莫大な利益を得ようとする人間や、ユダヤ教のカバラの秘儀に利用して神に近づこうとするユダヤ教徒が、登場し、サスペンス的な要素を強くしています。しかし、一番興味をそそられるのは、過去の偉人たちの残した理論や、定説が紹介され、数学的な知識を得られるだけでなく、数式の神秘的な魅力を私たちに伝えてくれる事でしょう。フィボナッチの数列、ピタゴラスの黄金比、らせん理論などが、ストーリーの中で分りやすく説明され、絶対的な数学的法則の存在の可能性に期待してしまうような内容になっています。また、ヘブライ語の文字が数字に置き換えられるなど、数字の神秘的な魅力にも引き込まれてしまいます。科学、数学の知識を分りやすく学べる上に、数字の神秘的な側面が、ミステリー、サスペンス作品としても楽しめるように工夫されているので、科学や数学に興味の無い方でも、サスペンス作品として楽しめると思います。ただし、ユーモアがほとんど無い作品で、主人公の妄想のシーンではグロテスクな描写もあるので、娯楽作品としてはオススメできません。ミステリーファン、知的好奇心を満足させてくれるような作品が好きな方のみに推奨できる作品です。

考えてはいかん、直感に従うんだ

　マックスの恩師であるソルが、アドバイスします。科学の重要な発見や発明は、不眠不休の研究の成果という面もありますが、以外に直感によって発見される事も多いようです。科学的な研究でも、芸術家のアイディアでも、結局は、直感に従うのが一番いいのかもしれません。

昔の日本人は、碁盤を宇宙の縮図と見立てた

　フィボナッチの数列、ピタゴラスの黄金比、らせん理論なども興味深いですが、碁盤の目が、混沌とした宇宙世界を表現しているという説は衝撃です。単純で整然としているようで、実は複雑で混沌としている、勝負の形は無限にある・・・。んー考えてみると深い話ですね。

我々が、螺旋から創られたとしたら・・・

　我々が従事するもの全て、螺旋で満たされている・・・。ＤＮＡ（遺伝子）の形もらせん形ですし、天才建築家ガウディも、らせん形を好み、設計に取り入れていたようです。探してみると、意外に色々とあるのかもしれません。宇宙や全ての物質の基本的な設計図は、らせん形が基本になっているのかもしれません。

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ダーレン･アロノフスキー監督

　この作品で、見事にサンダンス映画祭最優秀監督賞受賞を受賞したダーレン･アロノフスキー監督は、この作品で注目を浴びて、『レクイエム･フォー･ドリーム』『ファウンテン・永遠につづく愛』『レスラー』などの問題作、話題作を次々に監督しています。この作品では、数学、ユダヤ教などをテーマにしていますが、『ファウンテン・永遠につづく愛』では、不老不死の研究をする科学者が、仏教的な体験をする姿が描かれ、映画監督よりも、科学者に向いているんじゃないか？と思わせるような、独特の宇宙観、人生観のある監督で、アメリカの映画監督の中では、異色の存在です。

 

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