ヘヴィメタル・バンドとして世界最高に人気を誇るメタリカのドキュメンタリー映画。この映画の撮影が開始された直後に、ベーシストのジェイソン・ニューステッドが脱退し、その他のメンバー同士の人間関係も険悪状態になっていた。ベーシスト不在のまま新作のレコーディングもすすまず、マネージャーの提案で、バンドにセラピストが帯同する事になり、バンドの人間関係の改善からはじめていこうとするのだが・・・。

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　２００４年アメリカ作品。監督はジョー・バーリンジャーとブルース・シノフスキー、出演はメタリカのメンバーやプロデューサーなど。ヘヴィメタル・バンドとしては、最も成功したアメリカのバンド、メタリカのドキュメンタリー映画。今までのロックスターの映画とは異なり、演奏シーンなどが少なく、バンド内のの険悪な人間関係や、新作の製作に苦しむ姿など、生々しいバンドの実態を描いています。ロックバンドのドキュメンタリー映画、しかもヘヴィメタルというジャンルなので、ロックファン向けの映画です。

　これは、かなりリアルなロックバンドのドキュメンタリーです。全世界で大成功を収めたバンドのドキュメンタリーなので、ゴージャスな私生活には驚かされますが、それ以上に興味深いのは、経済的な成功を収めた人間が、どんどんエゴを大きくして抑制の効かない状態に陥り人間関係が破綻していく様子と、人間の欲の深さです。メタリカのバンドのメンバーを悪く言うつもりはありませんが、心ある人なら、こんな風にはなりたくないなと感じると思います。ドラマーのラーズとヴォーカル・ギターのジェームズのケンカは、とにかく相手の言うことやること全てが気に入らないという感じで、離婚直前の夫婦のような争いで苦笑してしまいます。そして、セラピストによって人間関係が改善されていきますが、このセラピストもバッタもん臭いと言うか、バンドにたかろうとする魂胆がミエミエで嫌な感じです。たかられていると察してすぐに切ろうとするメンバーも似たようなものかもしれませんが・・・。それにしても、これだけネガティブな部分を映画で公開してしまう度胸というのは、ある意味では凄いと思います。結局この作品は、ロックスターが大成功すると、とんでもない収入によって想像できないようなゴージャスな暮らしはできるものの、エゴのぶつかり合いが強くなって人間関係が壊れてしまう・・・、そんなドキュメンタリーです。世界的な成功を得た金持ちのミュージシャンが、どういう環境で暮らしているか？という事に興味がある方、または、メタリカのファンにとってはオススメの映画ですが、ロックにも興味が無いし、俗っぽい話はウンザリという方にはオススメできません。

普通ドラムって・・・

　新曲のアレンジをしているシーンで、ジェームズがラーズのドラムを批判する場面がありますが、バンドのトラブルでは、これも良くあることです。一般的には、ギタリストやベーシストが曲のアイディアを持ってきた場合、ドラマーは、ベーシックなパターンで合わせてから、他のメンバーと相談しながらパターンを変えたりするのが普通なんですが、ラーズは、他のメンバーに一切相談無しで、いきなり個性的なリズムパターンを叩き出します。この辺も、バンド内でのエゴのぶつかり合いを象徴しています。

映画がコケても

　一番笑えるのがこのシーンです。新たなベーシストとしてメタリカに参加する事になったロバート・トゥルージロが、メンバーとしてのギャラの配分などの説明を受けていますが、新人なので、この映画の制作費などのリスクが免除されます。映画がコケたら、損をするのは他の３人のメンバーだけ！と説明されたときの３人の苦笑した顔が忘れられません。この辺も生々しいですね。

ドキュメンタリー作品なので・・・

　この映画は、オフステージ、バンドのレコーディング、オーディションなどのシーンを中心に編集された映画なので、他のロック系の映画のようなバンドの演奏シーンを期待すると完全にアテが外れます。ほとんど演奏シーンが無く、この映画の撮影中に録音された新譜『セイント・アンガー』のプロモーションも兼ねているような映画なので、曲を楽しみたいなら、ＣＤを購入した方がいいでしょう。

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