櫻華学園高校では毎年、創立記念日にチェーホフ原作の舞台劇『櫻の園』を上演することが伝統となっていたが、創立記念日の前日、演劇部の生徒がタバコを吸っているのを見つかり補導されてしまい、一部の教師が『櫻の園』の上演を中止にすることを提案。演劇部顧問の里美先生は中止に反対し、何とか上演できるようになったが、知世子は、主演を演じるプレッシャーから緊張して、内心では中止を望んでいた。そんな知世子に密かに想いを寄せる由布子は、彼女を優しく励まし、二人の間に友情をこえる感情が芽生えてくるが、喫煙で補導された紀子は、由布子に特別な感情を持っていた・・・。

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　１９９０年日本作品。監督は『１２人の優しい日本人』の中原俊、出演は、中島ひろ子、つみきみほ、白島靖代など。毎年創立記念日にチェーホフの『櫻の園』を上演する女子高演劇部の少女たちの開演までの２時間の姿を描いた青春映画。

　吉田秋生の原作の同名作品の映画化なので、映画の完成度に不安を持っていた人も多いかもしれませんが、これは文句無く名作です。中島ひろ子、つみきみほ、白島靖代など、この作品以降も活躍する女優の他、オーディションで選ばれたフレッシュな出演者の演じる女子高生の表情、雰囲気は、かなりリアリティがあり、女性にとっては、十代の頃の感性を思い出させてくれる作品であり、男性にとっては、女子高という未知の世界を知る事のできる作品です。女性同士の愛情というメインテーマは、男性には理解しにくいテーマですが、生々しいレズとかではなく、プラトニックな女性同士の愛情の美しさには、神々しささえ感じられますし、新人女優ばかりを起用したことによって、女子高生の会話や行動が自然な感覚で描かれているという意味でも新鮮な感動を味わえます。やはり、主演の３人、中島ひろ子、つみきみほ、白島靖代の存在感、演技力は抜群で、自分が好意を持つ女性の幸せを、影から見つめるつみきみほの演技は、特に印象に残ります。冬の間に埃っぽく淀んだ空気を、ほんのりと桜の香りのする暖かい風が吹き飛ばしてくれるような、そんな感動を与えてくれる名作です。唯一リアリティが無い事といえば、あまりにもカワイイ子が揃いすぎているという事ですが、エンターテイメントとして考えれば、これも正解でしょう。出演者の魅力、演技力、感動的なストーリーなど、非の打ち所の無い傑作ですが、しっとりとした静かな作品なので、派手なエンターテイメント性や、色気を期待する人には向いていないかもしれません。

　私は、日本人の心の故郷である『男はつらいよ』シリーズや、伝説的なテレビドラマ『傷だらけの天使』の主人公に共感を持ってしまうような荒っぽい男なので、友人にこの作品をすすめられた時は、女子高生を描いた青春映画というだけで抵抗がありましたが、すっかりハマッてしまいました。おっさんになってからも、この作品だけは、一年に一度は必ず観ています。男女の恋愛で三角関係を描いた作品は多いですが、この作品のように女性３人の三角関係、しかも、醜い欲望や悪意が無いプラトニックな恋愛は、男にとってはかなり新鮮です。個人的な好みから言えば、男３人の三角関係とかいうのは勘弁願いたいですが・・・。

目覚めたのかな

　優等生ばかりの女子高に在学している由布子は、自分を自由に表現できない事に悩み、自由奔放な紀子にコンプレックスを持っていましたが、パーマをかけて気分を一新させます。いい意味での開き直りというか、何かが吹っ切れた時に、生まれ変わったような気持ちになれることがありますよね。

なりたくても、なりたくなくても・・・

　学校に行っている時は、一年という区切りで入学、進級、あるいは卒業を経験します。充実した生活をしていれば、いつまでも今のままでいたいと思いますし、学生生活に不満があれば早く卒業したいと思うかもしれません。でも、望もうと望むまいと時間は流れ、進んで行かなくてはなりません。入学、進級、卒業というはっきりとした年齢の重ね方を実感できる１０代は、時の流れ、移り変わりを一番痛感する年代なのかもしれません。今のままでいたい！、時間が止まってしまえばいい！と願っても、悲しいですが、諸行無常、時を止める事はできません。

吉田 秋生の原作も傑作！

　この作品は、吉田秋生さんの原作を元に映画化されましたが、原作ももちろん傑作です。原作を読む前に、この作品を観て感動した方なら、原作も楽しめると思います。大ヒット作なので中古品の品数も豊富で、かなり安く購入可能です。

 

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