一生使いたい名器
1988年発売当時定価160000円。CD-94のゴールドバージョンの限定モデルです。D/A変換部は、CD開発者独自の4倍オーバーサンプリングで動作する16ビットD/AコンバーターLSI・TDA1541を搭載、デジタルデコーダーをすべて16ビット化し、さらにTDA1541は、Lch・Rch専用のD/Aコンバーターを装備するL・R独立デュアルDACなので、超高域まで左右の位相ズレを追放し、30kHzに及ぶ広帯域特性とダイナミックレンジを達成しています。CDドライブメカに採用されているCDM-1メカをチューンアップして搭載。補強リブの追加による剛性向上と、レーザーシグナル用プリアンプの分離独立設置により、振動による音質劣化の可能性を排除しています。また、CDA-94などのセパレートタイプのD/Aコンバーターにデジタル伝送できるデジタル出力を搭載しています。オプティカル出力と75Ω同軸出力は、デジタル・オーディオ・インターフェース・フォーマットによって標準化されたもので、同形式の入力端子を持つ全てのD/Aコンバーターに対応。振動・共振対策としてシャーシには重量級ダイキャストを、底板には3mm厚の鉄板を採用し、さらに大型インシュレーター内部の空間にポルトランドセメントを充填するなどの工夫がされています。
近年CDプレイヤーは新技術が次々と開発されているので、名器と呼ばれる製品でも、中古のCDプレイヤーにはガッカリさせられることが多いのですが、このプレイヤーは、別格でした。マランツのCD−72の音の個性に感激し、さらに上位機種を使いたくなって購入しましたが、今まで購入したCDプレイヤーの中で最高の大当たりでした。まず、通常のCDがSACDのように高音質で楽しめるようになったので、リマスターCDへの買い替えをやめ、リマスターされていないCDでも十分に高音質で楽しめるので、ソフト代が節約できました。ヴォーカル、楽器の解像度の高さ、透明感はCD−72に比べて磨きがかかり、特にヴォーカル、コーラスの重なり具合、バランスが歌の魅力を倍増させてくれます。
ヴォーカルのレコーディングは、ハーモニー、コーラスを重ねる他に、ヴォーカルパートの厚みを増す為に、同じ音階で2テイクのヴォーカルを重ねてレコーディングされている事が多いのですが、アーティストによって音の重ね方が様々で、ヴォーカルの奥行きを持たせるもの、ヴォーカルに厚みを持たせるものなど様々です。このCDプレイヤーで聴くとヴォーカルの多重録音によるヴォーカルの深さ、奥行き、広がりのあるコーラスがタップリと楽しめます。また、弦楽器などの解像度の高さ音の伸びは勿論ですが、ドラムのタム、パーカッションの音の粒立ちの良さは特に際立っています。私はドラムをやっていたので、特にドラムの音に神経質なのですが、JBLのスピーカーを使わなくても抜けが良く輪郭のハッキリしたドラムの音を楽しめたのも感激しました。
現在ではビット数も24ビットまで上がりましたが、音質の向上を感じられない機種もあり、ビット数にこだわる意味が無いような気もします。このプレイヤーは16ビットD/Aコンバーターですが、左右独立で専用のD/Aコンバーターを装備しているので、左右のバランス、中央から聴こえるヴォーカルやバスドラ、スネアドラム、リード楽器などの音の定位が良く、曲の最初から最後まで音のブレがないので、音の揺れでイライラさせられる事もありません。ルックス的にも、比較的薄めでサイドウッドはワインレッド、高級感があるもののスマートで、最近のオーディオ機器と並べてもしっくりくるデザインだと思います。
一般的に言われているように、ロックよりクラッシックに向く繊細な音質だと思いますが、近年主流になっている重低音型でレコーディングされているリンキン・パークなどのヘヴィロック、エミネムなどのラップ系のCDを聴く場合、余分な倍音を抑えてくれるので、かえってロックにも向いていると思います。勿論ストリングスを加えたアレンジの多いロックアーティスト、コアーズ、シカゴ、ビートルズなどのアルバムにも最高ですし、ギターの響きの良さも究極的なので、ロックの名盤を聴くと、改めて名盤の持つ奥の深さに感激できると思います。精神的な疲れまで癒してくれる究極の名器のひとつだと思います。
主観ですが、音のグレードはエソテリックのDV−50と同じクラスだと思います。中古商品なら10万円以下で購入可能だと思いますが、トレイの故障が多いようなので、コンディションの良い商品は中々見つからないかもしれません。新品で10万前後のプレイヤーを買うなら、中古でコンディションの良いこのプレイヤーを10万で手に入れたほうが断然お得だと思います。
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