ミュージカル監督として活躍するジョー・ギデオンは、酒、タバコ、ドラッグ、女遊びに明け暮れたつけが回って、過労のため入院する事になる。彼は、生死の境をさまようような状況で、美しい天使に出会い、自分の人生を回想ししながらも、ショービジネスに生きてきた人生を後悔してはいなかった・・・。

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　１９７９年アメリカ作品。監督は『キャバレー』などのボブ・フォッシー、主演は、 『恐怖の報酬』『裸のランチ』などのロイ・シャイダー。自由奔放な人生をおくってきた映画監督の生き方を通して、ショービジネスの内幕と死生観まで描いたミュージカル映画の傑作。カンヌ映画祭グランプリ受賞作品。

　娯楽性だけを追及した普通のミュージカルなら、カンヌ映画祭グランプリは受賞できなかったと思いますが、この作品はミュージカル映画としてのエンターテイメント性の高い作品というだけではなく、ショービジネスの内幕を描き、さらに、人間の死生観という深いテーマを題材にしていて、他のミュージカル作品と比べて、かなり重厚な存在感があります。ミュージカル映画が苦手という方でも、この作品だけは、楽しめるかもしれません。さすがに、１９７０年代の作品なので、ファッションなどには古さを感じますが、音楽の質、イマジネーション豊かなダンスシーン、美人揃いの出演者の魅力など、どれを取ってもエンターテイメント性、芸術性の高い作品で、ミュージカルファンの中には、映画史上最も優れたミュージカル作品と考えている方も多いと思います。しかも、エンターテイメント性を壊さない程度に、ショービジネスに関わる人間のエゴや、金にまつわる利害関係がリアルに描かれていて、華やかなショービジネスの裏側を知ることもできます。そして、何より秀逸なのは、酒、タバコ、ドラッグ、女におぼれて、家族や他人に迷惑をかけ続けた主人公が、天使の幻と会話しながら自分の人生を振り返り、代償を支払わなければならなくというストーリーでしょう。エンターテイメントとユーモアを楽しみながらも、因果応報に通じるような深いテーマが感じられるミュージカル作品というのは、この作品だけかもしれません。タイトルは、『オール・ザット・ジャズ』ですが、ジャズ系の曲がテーマ曲になっているわけでは無いので、ロック、ポップスのファンでも十分に音楽、ダンスが楽しめますし、ダンスシーンは、ステージのシーンを中心に構成されていて、しつこいほど歌って踊るというタイプでは無いので、ミュージカルは苦手という方にもオススメできる名作です。

人の中に自分を探す

　他人の嫌なところを探すのは、他人の中に自分の欠点を見つけてしまうからだと、主人公のジョーが、天使に打ち明けます。ほとんどの人が、無意識のうちに同じような事をしているのかもしれません。嫌いな人間の象徴している性格や態度は、実は自分の中にもあって、自分自信の嫌いな所を他人に投影して憎んだり、嫌ったりしているだけなのかもしれません。ちゃんと自覚できれば、他人の中に自分の悪いところだけを見つけたりせず、良い部分も見るようにできるようになり、嫌いな人が少なくなるかもしれませんね。

 

もうウソもつけない

　ステージの監督をするジョーも参加してのクライマックスシーン。７０年代のロックをを象徴するような派手なメイクのバックバンドの演奏にのせて、素晴らしい歌とダンスが楽しめます。死んでしまったら、もうウソもつけないというセリフには、死ねば悪い事もできなくなるという意味合いも感じられ印象に残ります。ちなみに、このシーンのバックバンドのメイクは７０年代に人気のあったアメリカのロックバンドＫＩＳＳのメイクを意識しているようです。

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