友人の都合で、急に引越しをする羽目になった鈴木一郎というお人好しの青年の元に、ナナとマールという二人組がやってきて、今夜ここでクリスマスパーティーをするから出て行け！と一方的に立ち退きを要求する。大家さんに挨拶を済ませ、荷物の搬入が終わったばかりの一郎は、この二人に激怒して追い返してしまうが、ナナとマールの二人は一郎を追い出す計画を立てはじめる・・・。

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　１９９２年日本作品。監督は『四月物語』『リリイ・シュシュのすべて』の岩井俊二、出演は、鈴木蘭々、デーブ・スペクター、渡裕行など。年に一度、成仏できずにこの世に残っている霊の為にスープを作る謎の二人組を描いたハートウォーミングなファンタジー作品。

　この作品は劇場公開作品では無く、１９９２年の年末に放送された岩井俊二監督のテレビドラマですが、岩井俊二監督の評価が高まりDVDでも発売になった秀作です。６０分弱のテレビドラマですが、ヘタな映画よりも密度があり、観終わった後に何とも言えない幸福感に浸れる名作で、デビューしたばかりの鈴木蘭々の初々しい魅力が楽しめるのも魅力です。クリスマスを背景にしたファンタジー作品で、クリスマスの時期に観るのがベストですが、キリスト教やクリスマスをテーマにしているわけでは無いのでオールシーズン楽しめます。テレビドラマとして製作された作品なので、膨大な予算を投入して創られた映画に比べるとチープな作品で、ちょっと笑えない寒いジョークもあり、ふざけすぎているような所もありますが、心温まる感動作として、ちょっとノスタルジックな気分にさせてくれる異色のファンタジー作品としてオススメです。引っ越して来たばかりの一郎の部屋に、新聞の勧誘、ＮＨＫの受信料の集金、宗教団体の勧誘など、次から次へと招かざる客が訪れる場面は、東京で一人暮らしをした事のある人なら誰でも経験している事なので、思わず苦笑してしまう人も多いと思いますが、これも岩井俊二監督らしいブラックジョークなんでしょう。岩井俊二監督のファンなら絶対に観るべき作品でしょう。

　１９９２年当時、私は昼も夜も働きながらバンド活動をするという超多忙な生活をしていたんですが、なぜか、この作品が放送された夜は夜勤が休みでライブのスケジュールも入っていなかった為、リアルタイムで観る事ができました。エンディングのＢＧＭ『遥かなる影』が流れた瞬間に涙が止まらなくなったのを覚えています。岩井俊二監督が有名になってからビデオで発売され、現在はＤＶＤでも発売されていますが、当時は深夜枠のテレビドラマなので、もう一度観ることができるとは思いませんでした。ＤＶＤでの発売は、本当にありがたい限りです。ＤＶＤには、なぜか英語字幕が収録されていますが、英語圏の方にも、この作品を楽しんでもらおうという配慮からなのかもしれません。

想いとか恨みとか・・・

　ちょと考えさせられますね。人間って、生きている間に色々な想いや恨みを残してしまうんですよね。誰かを心から愛したり、感謝したりする良い感情、いい思い出だけが心に残ればいいんですが、死んだ時に恨みなどの悪感情が強すぎると、この世に未練が残ってしまうようんでしょうね。人の悪意に対して容赦する寛大な気持ちが無いと、怨みや悪意ばかりが残ってしまうのかもしれません。