クリッシー・ハインド姉御の率いる正統派
クリッシー・ハインド(Vo)を中心に、ジェイムス・ハニーマン・スコット(G)、ピート・ファーンドン(B)、マーティン・チェンバース(Ds)の4人で1979年にデビュー。パンク風のルックス、サウンドに、クリッシー・ハインド独特のポップセンスを加えたサウンドがうけて、デビュー直後からヒットチャートの上位にランクインし、メジャーバンドの仲間入りを果たします。
『愛しのキッズ』『プリテンダーズ』の2枚のアルバムは、デビュー当時のオリジナルメンバーでレコーディングされ、大ヒットしましたが、その後、ベーシストのピート・ファーンドンがクビになり、彼はドラッグの過剰摂取により死亡、ギタリストのジェイムス・ハニーマン・スコットも同じくドラッグで死亡してしまい、オリジナルメンバーはクリッシー・ハインドとマーティン・チェンバースの2人になってしまいます。新メンバーを加えて発表された『ラーニング・トゥ・クロール』は、ファンの期待を裏切らない傑作アルバムとなりますが、続くアルバム『ゲット・クロース』では、ドラマーのマーティン・チェンバースも脱退し、オリジナル・メンバーは、クリッシー・ハインドのみとなります。『ゲット・クロース』のアルバムは、黒人アーティストがリズムセクションを担当し、今までのような直線的なビートではなく、ファンク色の強いビートになり、デビュー以来からのファンは、かなり、戸惑いましたが、最高傑作と評価されるほど素晴らしいアルバムになりました。その後、クリッシー・ハインドは、ソロ名義で、映画『氷の接吻』のテーマ曲を発表するなどの活動もありましたが、近年、クリッシー・ハインドを中心に、オリジナルメンバーのマーティン・チェンバースがドラマーとして復帰、アダム・シーモア(G)、アンディ・ホプソン(B)を加えた4人で活動しています。
クリッシー・ハインドのワンマンバンドのように考えられていますが、デビュー当時のメンバーは、それぞれ個性的で、4人の個性によって、パンクバンドとは一味違った魅力のあるサウンドを聞かせてくれていました。クリッシー・ハインドの作曲能力に、きらびやかで艶のあるギター、前のめりで攻撃的なベース、直線的、白人的なドラムビートは、アメリカのバンド以上に爽快感のあるサウンドでした。そして、クリッシー・ハインドは、女性的な色気を武器にせず、ボーイッシュなルックスと、男勝りの姉御としての存在感あり、男性から見ても、カコイイ女!と認められる存在でした。
オリジナルメンバーの4人は、パンクロック風のサウンド、ルックスは、形だけではなく、かなり過激なライフスタイルで、ピート・ファーンドンとジェイムス・ハニーマン・スコットがドラッグで死亡、オリジナルメンバーの半分がドラッグで他界してしまうという、最悪の事態に陥ってしまいます。アルバム『ラーニング・トゥ・クロール』の『2000マイルズ』のPVには、亡くなった2人の多くの映像が収録され、いくら待っても帰ってこない仲間に対しての愛情と無念が感じ取れます。ほとんど同じ時期に、一度に2人の仲間を失ったクリッシー・ハインドとマーティン・チェンバースの喪失感は、想像を絶するものだったと思います。