「楽器が演奏できて、歌も歌えて作曲も出来る。こんな4人がバックバンドをする必要はないだろう?」グレン・フライのこんな提案により、元々はリンダ・ロンシュタットのバックバンドのメンバーだったグレン・フライ、ドン・ヘンリー、ランディ・マイズナー、バーニー・リードンの4人が、リンダ・ロンシュタットから独立する形でイーグルスが結成されます。
ファースト・アルバムから、ジャクソン・ブラウンとの共作「テイク・イット・イージー」が大ヒットを記録し、その後も「魔女のささやき」「ピースフル・イージー・フィーリング」と立て続けにヒット曲を発表し、トップバンドの地位を確立。ジャクソン・ブラウン、J・D・サウザーなどと共に世界中にウエスト・コースト・サウンドを広めた先駆者となりました。
セカンドアルバムは、、西部のアウトローとロックミュージシャンの共通点をテーマにコンセプトアルバムとして製作されました。後々までイーグルスの重要なレパートリーになる「テキーラ・サンライズ」、「ならず者」などの名曲が収録されています。アルバムタイトルにもなっている「ならず者」は、ロックのみならず、あらゆるジャンルのミュージシャンに演奏されるスタンダードナンバーとなっています。
前作の「ならず者」が暗めの内容だったのに比べて、3枚目のアルバムはファーストアルバムに近い明るさを取り戻した感がありました。グラミー賞の最優秀曲賞を受賞した「我が愛の至上」、トム・ウェイツの名曲をよりメロディアスに歌い上げた「懐かしき’55年」、バーニー・リードンの最高傑作とされる「マイ・マン」など秀作の多い作品でしたが、カントリーをベースにしたロックン・ロール・バンドというスタイルも3作目、変化には乏しく音楽的な限界も感じさせました。アルバム製作の途中から参加したドン・フェルダーのギターも、まだ個性を発揮するには至っていませんでした。タイトル通りに音楽的転換期の「境界線上」にいたアルバムといえます。
「呪われた夜」では「オン・ザ・ボーダー」製作の後半から参加したドン・フェルダーのギターが本領を発揮。バーニー・リードンのカントリーセンスとドン・フェルダーのソリッドで洗練されたギターサウンドが絶妙なバランスで楽曲に生かされ、前3作から比べてバンドとしての進化がハッキリと感じられます。しかも「テイク・イット・トゥ・ザ・リミット」「偽りの瞳」などのヒット曲をはじめ、秀作揃いの傑作アルバムに仕上がっています。
ドン・フェルダーの加入によりバンドのサウンドは飛躍的に進化しましたが、グレン・フライ、ドン・ヘンリーらのメンバーは前作に満足する事なく、更なるバンドの進化の為にバーニー・リードンの代わりにジェイムズ・ギャングのギタリストとして活躍したジョー・ウォルシュを新たにギタリストとしてメンバーにむかえます。6ヶ月間に及ぶレコーディングの末、歴史的な名盤「ホテル・カリファオルニア」を発表する。美しいメロディ、ハーモニーに彩られた名曲の数々が洗練されたアレンジで、より輝きを増し、哲学的で深遠な歌詞が心の奥深くにまで沁みこむ・・・。あらゆる意味で名盤と呼ぶにふさわしい傑作アルバムです。全世界で1000万枚以上のセールスを記録し、今でも売れ続けています。
「ホテル・カリフォルニア」の空前の大成功の後、バンドのソング・ライターであるグレン・フライは、ホテル・カリフォルニアの大成功により自身に満ち、余りあるほどのアイディアがあふれ出ていたらしいのですが、次回作へのファンの期待、レコード会社のプレッシャーからドラッグに手を出したドン・ヘンリーは、ドラッグの所持などで逮捕されたり、体調を崩したりでレコーディングから長期間の離脱する事になります。ドン・ヘンリーの長期離脱によりモチベーションの下がってしまった状態でレコーディングされたアルバム「ロング・ラン」は、メンバーそれぞれのソロの楽曲を1枚のアルバムに収録したような散漫な仕上がりで、セールス的にも前作に及ばず、アルバムの内容と同様にバラバラになってしまったメンバーの心が再び結束することは難しく、解散する事になります。
イーグルス解散後、グレン・フライ、ドン・ヘンリーの二人は持ち前の作曲能力を発揮し、ソロアーティストとしてコンスタントにアルバムを発表し、それぞれのソロとしてのキャリアを築き上げていたが、ファンの再結成への期待は大きく、ついに1994年、「ロング・ラン」のレコーディングメンバーの5人、グレン・フライ、ドン・ヘンリー、ドン・フェルダー、ジョー・ウォルシュ、ティモシー・シュミットというメンバーで再結成ツアーが行われ、ライブ録音の他、新曲4曲を含むアルバム「ヘル・フリーゼズ・オーヴァー」が発売される。アルバムの発売に合わせて世界ツアーが行われ、1995年12月には来日し、武道館などで往年のイーグルスファンを熱狂させました。
再結成は一時的なもので、今後の活動は未定とドン・ヘンリーは語っていたが、2000年以降もワールドツアーが行われた。後にドン・フェルダーが脱退し、グレン・フライ、ドン・ヘンリー、ジョー・ウォルシュ、ティモシー・シュミットの4人のメンバーにサポートメンバーを加えたメンバーでツアーがおこなわれました。2004年メルボルンでのライブがDVDとして発売され、再び来日公演も行われました。そして、ついに2007年イーグルスのニュー・アルバム「ロング・ロード・アウト・オブ・エデン」が発売され、発売と同時に世界中の多くの国でランキング1位を記録、往年のファンから若い世代まで幅広いファンに支持され、新たな歴史を作り始めています。
往年のイーグルスファンには、いまさら説明の必要はないとおもいますが、イーグルスについて語るときに忘れてはならないのが、その歌詞の重要性だと思います。ボブ・ディラン、ブルース・スプリングスティーン、U2などのアーティストと同様に、その優れた音楽性のみならず、リスナーの生き方まで変えてしまうような深遠な詩を書ける数少ないアーティストだと思います。ドン・ヘンリーの詩は哲学的な要素が強く、リスナーに人生を見つめなおす機会を与えてくれます。また現代のアメリカ社会の問題点をシニカルに歌った歌詞も多いですが、欧米化が急速に進む日本でも、全く同じような問題が起きているので、興味深いテーマが多いと思います。特に若い世代のファンの方には、じっくり歌詞も読んでもらいたいですね。ヘタな小説や映画より、良い教訓を与えてくれるのは間違いないし、人生の転換になるほどの叡智を与えてくれるような素晴らしい歌詞も多いと思います。
イーグルス詩集